挨拶

 本日はご多用のところ、お集まり頂きありがとうございます。

このような場で恐縮ではありますが、妻との出会いは今日のような青空が広がる日のことでした。

近所のスーパーに行こうとしていたら、イタチのような生き物が目の前を横切ったので後を追いました。

家の側溝に逃げ込んだので覗いていますと、通りがかりの人に声をかけられたのです。

本当に素敵な女性でした。

スラッとしていて色白で目がクリッと愛らしく…その生き物のことですよ。

事情を話したら、イタチではなくてんでしょうと言うわけです。

この辺りには昔から住み着いていて、地域の守り神として大事にされていたのだそうです。

神々しく尊い存在です…てんのことですよ。

私は仏教徒なので詳しくはわかりませんが神道の考え方ですか?と聞いたら「そうだと思います。我が家はクリスチャンの家系なので詳しくはわかりません。でもこれも『天(てん)の導き』でしょう」と。

「時の流れに身を任せ…お義父さん、お義母さん、どうかお嬢さんとの結婚をお許しください」と挨拶を致しましたらば、「なんだね、今から君はうちの福子以外の女人とも関係を持つと言うのかね?!」とお叱りを受けました。

そんなつもりはなく、時の流れと共にどんな困難も乗り越えたいという意味だと必死に説明をしたのです。

「誠実な思いを知ることができ、むしろ君以外に娘は託せない」と結婚のお許しを頂きました。

これぞまさに、『災い転じて福と成し』たわけです。


 そんな妻とはあと1年で金婚式でしたが、一足先に天国へ旅立ってしまいました。


 ですが、彼らには私たちのように慈しみ笑い合いながら困難を共に乗り越え、夫婦関係を築いてもらいたいと思うのです。

どうか娘夫婦に、変わらぬお力添えを頂戴したく存じ上げます。


 本日は誠にありがとうございました。

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