続・カフェ巡り(予告編)

※本章は2023年4月7日時点の『カフェ巡り』および『フェイクドキュメンタリー』の記載を前提に書いている。当該二作品がそれ以降にやむを得ず修正された場合、本章の内容に齟齬や不明点が生じる可能性があるが、ご了承願いたい。なお、当該二作品および本章を私の意志で完全削除することだけは絶対にしない。それをここに宣言しておく。



 『カフェ巡り』を作品として公開した時点で、もしかするとこんなことが起こるかもしれないとは思っていた。自分としては、気持ちを一段落させるために書いていたつもりだったが、今となっては、むしろ、こういう展開を期待して書いていたのかもしれないとさえ思える。


 年度が明けてすぐ、令和五年四月、私はS・Tを見つけてしまった。


 何のことはない。隣の席に座る後輩の同期の人間であって、要するに知り合いの知り合いだった。思ったほど広い世界ではない。そういうこともある。私の同期の人間がTV番組に少しだけ出てきた、という他愛のない雑談の中で、後輩の同期が庁内ネットワークで検索できない謎の部署に異動になったという内容がひょっこり現れた。『カフェ巡り』のことが頭にあったので半ば冗談のつもりで名前を聞いてみたら本当にS・Tだった。奇しくも『カフェ巡り』でたてていた私の仮説は完璧に当たっていたことになるが、蓋然性は高いだろうとも思っていたので驚きはない。

 後輩は、今でこそほとんどやり取りはないが、S・Tの私的なメールアドレスもLINEアカウントも知っているという。

 ふざけた話だ。こういう、よくわからない偶然で話が進展するのはリアリティに欠けるタイプの実話系怪談にありがちだな、と思ったが、さすがに、「早速連絡をとり、首尾よく直接会う約束をとりつけた」みたいな展開にはなりえなかった。私は、S・Tのことを後輩にどう説明すればよいかわからず、「もしかしたら顔繫ぎをお願いすることになるかもしれない」みたいなことだけ告げて、不審がられた。後輩は当然、『カフェ巡り』のことを知らないし、Nの起こした事件についても、全く知らないということはないだろうが、「一時期ちょっとTVで報道してたな」くらいにしか把握していないだろう。よもや私がその犯人の知り合いであって、変な罪悪感にとらわれて、こんな文章を昔からの筆名を使ってネット上に大々的に公開しているなど、想像できないはずだ。


 私の思惑は、色々と瓦解している。『カフェ巡り』の架空性を維持するのであれば、そもそも本章を書くべきではない。それも重々承知している。『フェイクドキュメンタリー』で記載した通り、『カフェ巡り』はフェイクドキュメンタリーの形式の作品なのだから、今後万が一、Nの実名やCのアドレスなるものをコメントで書き残す者が現れたところで、「ヤバい奴がまた来た」くらいの話でしかないし、それがなのだが、ここまでくるとNC実在の人物や特定のサイトに迷惑がかかる危険性もゼロでない。

 作中人物の名前を安易にイニシャルにして出したことを少し後悔している。リアリティのある仮名を考えるのが難しく(特にカフェ紹介サイト名)、実名(勿論、という意味だ)をそのまま流用してしまった。

 自分で書いていて、このもどかしさは何かに似ていると思ったら、あれだ。パチンコの景品として現金を提供することは違法とされているので出玉を換金することはできないはずだが、何故か皆、それに近いことが成し遂げられている事実を当たり前に知っている。しかし、そのことを正面から口にすることは許されない。つまり、私の作劇スタイルは、三店方式に準ずる構造なのかもしれない。『カフェ巡り』も『フェイクドキュメンタリー』も、リアリティーに力を入れただけの完全なフィクションであるので、現実の出来事と関係することなどないはずだが……、という絡繰りである(メタ的には、これ自体が、フィクションをリアルに見せかけるフェイクドキュメンタリーの技巧でもある)。


 もっと本当に気持ちの落ち着いた頃、S・Tに会って話をしてから、後日談のようなものをひっそり上げるべきかとも思ったが、鉄は熱いうちに打て、でないが、私の執筆意欲は長持ちしないし、ネガティブな感情に支配されている時ほど筆が進むタイプであることも手伝って、本章を書き始めた。そして、書くだけ書いて公開しないことも頭を過ったが、せっかく書いたので勿体ないという思いと、いずれ絶対にS・Tと対峙するというタスクを自分に課すために、「続編の予告編」と銘打って公開することに決めた。

 実際のところ、S・Tと会って直接話すことが出来るかは、正直微妙だと思っている。『カフェ巡り』では、一言物申してやるくらいの勢いで相当息巻いていたものの、あれはS・Tが見つからなかったからこそ少し脚色して書けたのであって、いざとなると及び腰になってしまう心理はわかってもらえるのではないかと思う。最悪、メールでのやり取りだけに終始するかもしれないが、S・Tと対決した際には、『カフェ巡り』の続編を書き、差し支えない範囲で公開するつもりだ。


 全くの余談だが、2023年4月7日時点で、某カフェ紹介サイトに喫茶店が取り上げられたことはないようだった(正直アクセスしたくなかったが、本章を書く時、思うところがあって確認してしまった)。更新が止まったわけではないみたいなので、もしかするといずれ取り上げられる日が来るのかもしれない。

 私はカフェ巡りが趣味ではないので、何もコメントする立場にない。

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