#3



恋衣ちゃんと2人きりの温泉旅行の予行練習(本番有り)3日目午前。


そろそろ退室の時間であるわけだが、泊まっていた部屋内が凄い有様である。普段とは違う環境でテンションが上がって2人で暴れ回った結果。掃除する中居さん大変そうなので気持ちばかりお掃除した。



「恋衣ちゃんお掃除ヘタクソだね!」


「ふぉんなふぉふぉふぁいよぉ!」



ついでに恋衣ちゃんにもお掃除してもらった。


短い期間では会ったが恋衣ちゃんと楽しく過ごした部屋を後にするのは少し名残惜しさを感じてセンチメンタル。今度はみんなで来よう。そうしよう。


そうして老舗旅館を後にした。



帰りに旅館周辺の観光スポットをのんびり散策しつつお土産を買う。



「恋衣ちゃん!見てこれ木刀!買っていいかな!?」


「必要ないと思うよ!」


「恋衣ちゃん!見てこれギンギラドラゴンが巻きついた剣のキーホルダー!買っていいかな!?」


「必要ないと思うよ!」


「カッコイイんだけどなぁ」


「もう修学旅行の男子中学生じゃないんだから……」


「じゃ、温泉まんじゅうとか買って帰ろうか」


「そうだね。それがいいでと思うよ?」



この温泉まんじゅうは帰ってひとりで食べて研究して同じものを作ってみんなに食べさせようと思った。ホノカくん特性温泉まんじゅうを楽しみにしとくといいわくくくくっ。



気がつけば昼時になったので地域住民から愛されてそうな大衆食堂っぽいところで昼食をとることにした。


恋衣ちゃんはトンカツ定食を頼んだので俺も恋衣ちゃんと同じものを頼む。ついでにサイドメニューに温泉卵などあったのでそれも追加注文。



「おっと手が滑って温泉卵が綺麗な放物線を描いて恋衣ちゃんの顔にぶっかかって恋衣ちゃんの顔が白いのとかいろいろなモノでドロドロになってしまったー!」


「ふぇえ……顔に白いのが……生臭い(臭くない)よぉ……」


「今舐めて綺麗にしてあげる!」



恋衣ちゃんの顔をぺろぺろした。ぺろぺろ。



そんなこんなで俺と恋衣ちゃんの2人で楽しい2泊3日のポロリしかないよ!温泉旅行!予行練習は幕を閉じた。




◇◇◇




帰宅。




「ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!どうしても我慢できなかったの!ホノカくんと2人っきりで旅行行きたかったのっ!それで嘘ついてホノカくん連れ出しましたっ!反省してます!もうしませんっ!だからもう許してぇえっ!ぶひぃっ!」



との事でどうやら恋衣ちゃんは俺に嘘ついて連れ出したようである。


夏休みの補習が急遽中止になったという事実は無く、そう言われて連れ出された俺は当然無断欠席扱いになって教師の花永がお怒り、残されたら透子がイライラしていたり、連絡の取れなくなった俺を心配したミカちゃんが不安になったいたり等々。各所にご迷惑をかける結果となった。



「恋衣ちゃん、嘘ついたらダメって言ってるよね?」


「だってぇ!ホノカくんぼくと2人で旅行行かないって言うからっ!」


「それでもダメなモノはダメ」



恋衣ちゃんはたっぷり折檻した。オシオキではあるが等の恋衣ちゃんはわりかし嬉しそうにヒィヒィ言っていた。



「りょこうにもいけたし……オシオキもされちゃったし……しあわしぇ……」



最終的に今回の1件は2度美味しい思いをする事になった恋衣ちゃんの一人勝ちとも言えなくもない。


しかし。



「ホノカきゅん……だいしゅきぃ……」



可愛いから全部許す!




◇◇◇




「ハブる」



透子様の貴重な発声シーン。珍しくキッパリと声に出して透子は恋衣ちゃんに判決を下した。



「そうだな。今度の旅行は横山抜きで4人で行くか」


「ウチもそれでサンセー!恋衣ちゃんひとりで美味しいおもいしてズルいし!恋衣ちゃんハブろう!」



俺と、彼女の透子、嫁教師の花永、オトモダチのミカちゃん、そして被告人のブタ。


後日、みんなで行く温泉旅行の話し合いが行われた。



「やぁーだぁー!恋衣ちゃんも旅行イクッー!」


「糞豚」


「ダメだな。留守番だ」


「まっ、1人だけ美味しいおもいしてマジずっこいし!ハブられんのは当然でしょー!」



今回の恋衣ちゃん抜け駆けお泊まり旅行の断罪。


恋衣ちゃんだけ置いて行ってみんなで温泉旅行を楽しもうという話の方向になっていた。それぞれ今回の恋衣ちゃんの行動にはお怒りのご様子である。



「ふぇえ……バブぅ……ヤダァ……!ほ、ホノカくんからもみんな説得して!ホノカくんも恋衣ちゃんとまた温泉行きたいよね!?ホノカくんは恋衣ちゃん置いてったりしないよね!?」


「そうだね。確かに恋衣ちゃんをひとりだけハブるのは気が引ける」


「ほらっ!」


「それじゃこうしよう。恋衣ちゃんは連れていくけど全部見てるだけってことで」


「…………」



ありよりのあり。と、透子、心の声。



「なるほど。それはそれでいいかもしれんな」


「あっ、それいいかも!」


「見てるだけ……それってみんながあんなことやこんなことしてても、ぼくだけ全部見てるだけの放置ぷれーの焦らしぷれー……?」


「そうそう」



脳みそ壊れそう。



「まぁ……連れてって貰えるなら……それでも……いいかも……」


「…………」



このブタ。コッソリ隠れて連れ出してヤレばいいやとか考えてそう。


と、透子、心の声。


それは恋衣ちゃんならやりかねないと俺氏も激しく同意。



やっぱり連れてくの辞めますか透子さん。


いや。いざとなったら縛って吊るすからいい。


じゃ、予定通り5人で行って、恋衣ちゃんはチャーシューのように縛り上げる方向で行きましょう。


おけ。



こうして恋衣ちゃんの処遇が決まったのであった。



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