ホワイトデーにお返しを渡さなかった事に関する言い訳をする男

くらんく

ホワイトデーに何もなかった理由

「ねえ京田」

「なんだい高橋さん」

「昨日が何の日か知ってる?」

「そういうのって普通、今日は何の日か聞くものじゃないかな」

「いいから答えて」

「そうだなあ、昨日は3月14日だから……」

「だから?」

「一般的にはホワイトデーになるね」

「だよね」

「それがどうしたの高橋さん」

「どうしたの、じゃないよ」

「というと?」

「お返し、貰ってないんだけど」

「お返しって?」

「バレンタインデーのお返しだよ」

「ああ、なるほど」

「もしかして忘れてたの?」

「いや、そんなことないけど」

「じゃあ頂戴」

「ちょっと高橋さんに聞いて欲しい話があるんだけど」

「なに、忘れた言い訳でもするつもり?」

「いやいや、これを聞いたら納得するはずだよ」

「申してみよ」

「高橋さんは他人に施しを与えるときに見返りを求めるタイプ?」

「そう来たか」

「奉仕に対して返礼を強要するのは良くない思うんだ」

「確かにね」

「わかってくれたかな」

「じゃあ自主的に返礼して」

「自主性を要請するんだ」

「3倍返しね」

「しかもがめつい」

「忘れてたんだからその罰だよ」

「いやいや、忘れてないよ」

「忘れてたでしょ」

「気付いてないと思うけど、これは高橋さんが得するようにだよ」

「また変なこと言い出した」

「リボ払いって知ってる?」

「月々一定の額で返済するやつだっけ」

「そうそう」

「それがどうしたの」

「実はそれ使ってるんだよね」

「リボ払い使う人っているんだ」

「僕は毎日高橋さんに少しずつ感謝の気持ちを返してるんだ」

「チョコレートの返済に何日かかるのそれ」

「ざっと5年くらいかな」

「3倍返しだよ」

「じゃあ15年はいくね」

「京田には毎年チョコ送るよ」

「それは困ったな」

「リボ払いは死ぬまでついてくるよ」

「じゃあ死ぬまで高橋さんに感謝しないとだね」

「……」

「どうしたの、高橋さん?」

「それって告白、かなって……」

「違うよ」

「そうなの?」

「昨日勇気が出なくて告白できなかった、小心者の言い訳だよ」

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