第5話 聖女、部屋に引っ越してくる

 ――コンコン!


「ううん……は!しまった!」


 俺はベットから飛び起きた。

 今日はトリーシャが来る日だった!

 昨日も深夜まで残業していて、そのままベッドで寝てしまった。


―コンコン!コンコン!!


 やばい……戸を叩く音が大きくなっている。

 早く出ないと。

 俺はおそるおそる戸を開けた。


「お、おはよう……トリーシャ」

「もお!遅いです!まさか寝ていたんですか?」

「……ごめん。寝てました」

「今日お部屋のお掃除をしますから、早く支度してください」


 16歳に叱られる25歳。

 さすがにすげえ恥ずかしい……


「……この部屋、何日掃除してないのですか?」


 汚い俺の部屋を見て、呆れるトリーシャ。

 洗い物はやってないし、床も窓も埃だらけだ。

 毎日深夜まで残業していたから、部屋の掃除をする体力がなかった。

 休日は朝から晩まで寝てばかりいた。


「うーん……何日くらいだろう?」

「はあ……そんなことだろうと思ってしました。前に来た時にお掃除たいへんだなって覚悟してましたから」


トリーシャは馬車から箒と雑巾を出してきた。


「まず、お掃除しましょう。あたし、着替えますから」

「お、おう」

「絶対、見ないでくださいね!見たら殺しますから」


 ジト目で俺を見るトリーシャ。

 ちょっと怖いけど、ジト目もかわいい。


「あ、アルくん。やらしーこと考えてますね」

「ははは。バレたか」

「からわないでください!めっ、ですよ!」


 トリーシャはビシッと人差し指を立てた。

 顔が真っ赤になっている。

 最初から少しからかいすぎたようだ。


「さ、出ていてください!」

「はいはい」


 トリーシャが俺を部屋から押し出した。

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