第4話 仕事と家庭の両立

「ふう……やっと終わった」


 トリーシャは一旦村に戻って、週末に馬車で俺の部屋へ引っ越してくる。

 それまで俺は、いつも通り錬金術師の激務をおこなしていた。


 最近、アメトリア商会は事業規模を拡大している。

 他の商会との競争に勝つために、ギルドから大量のポーションを制作を受注するようになった。

 新規で錬金術師を何人も雇ったから、人の管理が必要になってくる。

 俺は術師長のイスミ先生の補佐として、書類仕事も手伝うようになった。

 仕事が増えたおかげで、俺もイスミ先生も疲れていた。


「アルフォンス。お疲れさま」

「ひゃあ!!」


 イスミ先生が、俺の首筋に冷えたエールをそっと当てた。


「あはは!女子みたいな声だな!」

「先生……子どもじゃないんですから……」


 イスミ先生はイタズラぽっく笑った。

 

「……最近、大丈夫か?前より仕事は増えているが」


 イスミ先生がエールを俺に手渡した。

 仕事が増えたからか、イスミ先生の酒の量が増えている気がする……


「作業量は増えましたけど、大丈夫ですよ。楽しくやってます」

「そうか……ならよかった。顔色も悪くないようだ。何かいいことでもあったのか?」

「えーと、別に……」

 

 9歳も年下の聖女と同棲することになったとは言えない。


「……女だな?」

「へえ?」


 イスミ先生はジッと俺を見つめた。


「バレバレだぞ!!私という女がいながら浮気か!!いつからだあ!!!」


 イスミ先生が俺の胸ぐらをぐわっと掴む。

 く、苦しい……この人、ガチだ。


「いや、俺はイスミ先生と付き合ってませんけど……」


 ここは冷静に対応しないといけない。イスミ先生は怒るとすげえ怖いから。

 それに、イスミ先生仕事は雑だけど、人を見る目は昔から鋭い。

 もう話すしかないか……


「観念しろ!私にすべて話しなさい」

「わかりましたよ。実は……」

 

 俺はトリーシャとのことをイスミ先生に話した。

 

「ど、同棲だと……?なんて羨ま……不純な!」

「不純って……ただ保護者としてトリーシャを預かるだけですから」

「なるほどな。ついにアルフォンスも家庭を持つようになったか。これで独り身は私だけになってしまった……ううっ」


 さっきキレたかと思えば、今度は泣き出した。

 本当に慌ただしい人だなあ……

 

「まだそんなんじゃないですよ」

「そうか……アルフォンスも仕事と家庭を両立しないといけないな」



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