ありそうでない、とは良く言うが、これはまさにそれではないだろうか。当初は昭和のヤリチンが自分が転生していたことを思い出した寝取り返す話かと思っていたが、そもそも争いにすらなりそうにない展開……
愛されたいと思うのならば自分を磨くのは当たり前、と言うのが女性だけではなく男性にも急速に広がっている現代において、昭和の男が令和に近い価値観で自分磨きから始めるのがなんか笑ってしまうが、寝取り返しではなくて純愛(ただしハーレム)であると言う捻りはなかなか斬新であるとしかいいようがない。
そもそも勇者ハーレムとか言って、魔王を倒した後の勇者パーティのその後を現実的に書いている作品は非常に少なく、男女の付き合いという観点で見ると全く新しい道を切り開きつつある作品なのかもしれないと思う。
人格が混ざりながらもほぼ別人の教養と身だしなみ、つまりやり返しているのではなく別人が入れ替わって戦っている感じは、決して暗い心に基づくものではなく、読んでいる方に爽快感はないにしても確実な満足感を与えてくる。
今後似たような作品が出てくる予感はあるが、始めたのは作者と言って良いだろう。勇者ハーレムパーティ、現実的でないとは良く言われてきたが、ここまで真正面からそこに向き合った作品は読んだことがない。
野心的な作品だと思う。