4.ブーステッドバトル!!

『きぃあ!! ごぁああああああああああああああああ!!』


 うっげ!! 怖え怖え! 俺の強化魔法三連発が見事に入ったミィアンは!

 力が漲り切って、発狂でもしそうなのか、どうなのか!

 すんげえ絶叫を放って、こっちに向かって突っ込んできた!!


「マキアン!! 横に飛べっ!!」

「わっ!! ちょい勘弁っ!!」


 まずは近くにいたマキアンに襲い掛かるミィアンだったが!!


「ファイアミサイル!!」


 俺がぶっ放した炎弾を胸に受けて、のけぞってそれは失敗! マキアンは安全地帯まで突っ走って難を逃れる。


「おらぁ!! オーガハーフ娘!! 俺は酒場のマスターと約束したからな!! お前がおかしな行動を取ったら、大人としてちゃんと扱ってやるって!!」


 そう怒鳴りながら、俺は二発目のファイアミサイルをぶっ放す。

 それをまともに喰らったミィアンは、怒り狂ってこっちに突っ込んでくる!!


「おー!! あぶねえったらねえ!! お前の敵は、こいつらだっ!! エッジウィンド!!」


 そこで、俺は後ろを向いて風の刃の広範囲魔法を放つ!!

 何やってんのかっていうとだ!!


『『……敵対因子確認。排除ニ移ル……』』


 魔法は効かないとはいえ、攻撃魔法をぶち込まれたら。流石に鈍いこの巨人鉄兵器も反応するだろうってわけで、マシンギガントを刺激してってこと!

 けっ! 見事に二体とも動き始めたぜ!!

 冴えてるじゃないか、このザクトールさんも、なかなかだ!!

 死が目の前に来ている人間ってのは、その危機を乗り切るために。

 妙に頭が回るもんらしいぜ!!


『ごぉう……、がぁ……』


 俺を間に挟んだ。ミィアンとマシンギガントだが。


『敵対因子ノ内、高生命エネルギーヲ発スル個体ヲ特定』

『優先シテ排除スル!!』


 お互いに、優先して潰すべき相手を確認したと見える。

 間合いを詰めながら、相手の出方や隙を窺っている。


『くぇあああああああああああ!!』


 うおっ!! ミィアンが仕掛けたっ!!

 もんのすげえスピードで、マシンギガントの一体に飛びかかり、ぶちかまし、押し倒すと。あとは、あの鉄巨人の腹やら胸を、とんでもない腕力と膂力でガンガンガンガンと派手な音を立てながらぶん殴りまくっている!!


 そして、バキィッ!! というすんげえ音がしたと思ったら!! マシンギガントの胸装甲を引っぺがして、中の精密機械部に手を突っ込んで!!

 何か掴んだような様子で、腕を引っこ抜くと!!

 そこには、マシンギガントの活動エネルギー源である、陰陽子バッテリーのコアが握られている!!


「おい!! やべえ!! マキアン、その壁の向こうで伏せてろっ!!」

「わ、わかった!!」


 俺は咄嗟にマキアンに怒鳴りつつも、自分は魔導反射結界を展開!!

 陰陽子バッテリーコアってのは、まあ簡単に言うと。

 反物質電池の事だ!! 危険極まりねぇ!!


 案の定、ミィアンがぶん投げたバッテリーコアが機械神殿の壁にぶつかった途端に、凄まじい閃光と爆風!! そして高熱がぶっかかって来て、耐久力の低い魔導師の俺は、魔導反射結界を張るのが遅れていたら蒸発していただろうなと思えた、周囲の惨状だった。


「あ、あたたたた。すっごい爆発……。良く生きているわ、私。この壁、私の居た裏側は大丈夫だけど、こっち側溶けてるじゃない……」


 頭を振りながら、恐々といった様子でこっちにマキアンが歩いてくる。


「マキアン!! 忘れるな、もう一体いるんだ!!」

「! あ、そうだった!!」


 爆心点に近い辺りに視線を戻す、俺とマキアン。あの爆発で、それを起こしてしまったミィアンも吹っ飛んだか?

 そんなことも思ったが……。とんでもないぞ。


 全身の鎧や服が吹っ飛びつつも。

 ミィアンはそこにいた。

 先程の反物質爆発の熱で、全身の皮膚が焼けただれているが、それも。

 僅かの間で、驚くべき再生能力で、皮膚が回復して。

 あの闘いの鬼の血が確かに入っている戦いっぷり割には、妙に綺麗な肌が整って行く。

 それに、チリチリになった髪の毛の再生速度も凄い。

 焦げた部分を惜しげもなくさっさと捨てて、新しい髪の毛が新陳代謝の強烈な促進が成されているように生えてきた。


『ぐう……るるる……』


 だが、流石に少しは疲れたのか。そこに座り込んでしまった。


「お、おい。ミィアン?」

『くぅ?』

「頼む!! 俺が何言ってるかわかるんなら、もう一体のマシンギガントもブッ飛ばしてくれ!! まだお前にかけた強化魔法の効果時間内だぞ!!」

『むー……ぅ?』


 ミィアンが。何かを掴んだ手を、俺に差し出した。

 俺は、それを見て。

 気絶した。


 だってよ、もう一体のマシンギガントの首、だったんだから。

 このオーガハーフ娘、ヤバすぎる。


 もし、この後。

 俺がこの娘に喰われることが無く、街に帰れたら。

 コイツとは絶対絶縁をしようと、俺は思うのだった。

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