幸せを拾う僕

黒鉦サクヤ

幸せを拾う僕

 僕は今、とてもついている。

 今までの不幸が嘘のようだ。

 きっと、あの出来事がきっかけとなって、僕に運が向いてきてんだ。

 僕は無邪気にそう信じていたのだ。


 ある日、僕は道端で落ちてた封筒を拾った。黄色い封筒で中に何か厚みのあるものが入っている。なんだろうと思っていると、自分の中を何かがすり抜ける感触がした。慌てて周りを見てみたが、何もない。おかしいなと思いつつ、僕は気持ちの悪さから中身を見ずに、拾った封筒を近くのゴミ箱に捨てた。

 後日、僕はまた黄色い封筒を見つける。道行く人はその封筒が見えないのか、そのまま通り過ぎていく。僕は吸い寄せられるように封筒を拾う。すると、また何かが体をすり抜ける感触があった。前回は気持ちが悪いと感じたのに、今日は清々しい気分だ。軽くなった体に浮かれながら、僕は封筒を捨てた。


 こうして、僕はその後も引き寄せられるように黄色い封筒を拾い続けた。その回数はなんと六回。その六回とも体を何かがすり抜ける感触がし、その度に違う気分を味わった。恍惚としたり、怒りを感じたりと様々だ。

 そんな不思議体験をしても、僕が封筒を拾い続けたのには訳がある。封筒を拾ってから、何故か今までの不幸が嘘のようにツキが回ってきたのだ。

 本当は、これが僕の人生だったんだと思った。僕が落としてしまった運を自分で拾っただけなのだ、きっと。

 良いことが続き、僕は七回目となる黄色い封筒を見つける。ラッキーセブンって言うじゃないか。これで僕はもっと幸せになる。迷うことなく封筒を拾う。

 その瞬間、僕の世界が暗転した。

 暗闇の中に、七つの人影が発光したように浮かび上がる。僕は恐怖から尻餅をついた状態で後ずさるが、すぐに壁のようなものに阻まれ動きを止めるしかない。早く逃げなくては、とり憑かれてしまう。そう思ったとき、耳元で声がした。

 たくさん憑いてたでしょ? ラッキーセブンよ、と。

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