終章 いつでもどこでも

さてさて、長時間このしがないネコの

愚痴話に付き合ってもらってすまなかったのぅ…達也さん。


何か物語のいいヒントになりましたかな?


ほう、とても充実した

心地よい時間だったと?

なんと嬉しい事を言ってくださるお方だ。


しかも、達也どののお宅にお招きされると…

これはなんと恐れ多い事で


なるほど

私の話をまだまだ聞いていたい

そんな感じですな。


ありがとう達也どの…


私は以前

人間が嫌いでした…

人間は欲深くて、勝手で…

弱い私達ネコを遊びと称して殺戮し

生まれたばかりの子猫を無責任に捨てていく

私は何匹も可愛らしい子猫達が衰弱していく姿を見ては人間を憎んでいました…


あの箱のおかげで

知恵がついていくうちに


そんな人間もまたシュレディンガーの理論なんだと理解したんです。


そりゃ、私もその人間を見て

その首根っこを噛みちぎりたいほど怒り憎んでいました。


しかし…

その人間の全てがわかるわけではない

不確定要素の存在を断罪することはそれこそ

安易で残念な事


確かに私の怒りや憎しみはあります

ただ相手はどう言う気持ちであの子猫達を捨てたのか、遊びと称して殺戮したのか

全てわからないのです。


だから私も人間という知の探求(クエスト)を始めたのです。


わからないなら

それがなんなのかを識るという事…


それからでも私は赦すか憎むか

選ぶことができる。


結果、私は人間を憎むのを辞めました。


昨今、この世界では人間同士で争い会う出来事があります。

身近なこの公園でも人間達がケンカをしているところを見ました。


これもまたシュレディンガーの応用で

理解すれば私の様に赦す事ができるのではないかと、言いたいです。

だからこそ…


この理論は

いつでもどこでも理解をすれば応用ができる

理論なんですよ…


その結果私には

達也どのという素晴らしい方に出会えた、そして新たに友達として迎えてくれたのです…


こんなに嬉しい事はない…

本当にありがとう、達也どの…





あれから一週間後


私の部屋には段ボール箱がある。

その中には気品が高く知的で紳士的な友人…

いや、友猫が今も十六茶のペットボトルを傾けて飲みながら昼下がりの日差しを楽しんでいる。



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