No.7

澤田啓

第1話 かがやけちょうりゅう

「7番、センターフィールダー!!

カズヒロォ・オトイシィ!!」


 午後5時30分をちょっとだけ過ぎ、まだ4月上旬の夕空は肌寒い。


 屋外野球場Outdoor Baseball Fieldを照らしている水銀灯のカクテル光線も、試合開始まで約45分前のグラウンド整備に勤しむ人々と、空席の目立つ観客席を、冷たく白い光で包み込んでいるだけ。


 彼はと云えば今夜の試合gameで7番目に呼ばれた自分の打順を、何の感情も沸き起こらない乾いた眼でボンヤリと眺めている。


 関西の(一応)都市圏にあるK市を本拠地とする『オイークス・ブルーブラスト』は、開幕からの6試合を0勝6敗の戦績で終えて本拠地の開幕戦を迎えている。


 本来であれば地元ファンの前で誇らしく、そして沸き立つような高揚感と共にこのフィールドに立っていなければならない筈の試合だ。


 そして数少ないとは云え、ブルーブラストのファンを名乗る人間であれば、選手と同様の気持ちの昂りを感じ、今年のペナントレースの展望を語り合うべき祝祭のような日であるべきであった。


 しかしながら今シーズンにおいては、監督コーチ以下首脳陣も選手達もそしてブルーブラストを愛するファンですら、どこか虚無感にも似た諦観を以てこの試合を迎えている。


 昨年オフに主力選手の相次ぐ引退とMLBへの流出により、今シーズンの開幕メンバーは昨年とは打って変わって2軍farmの試合ではないのかと疑われるようなラインナップであったからだ。


 開幕前の解説者による順位予想でも、ほぼ全員(昨年引退したOBの予想ですら)がブルーブラストの最下位を予想し、ここまで予想に違わぬ惨憺たる成績を残してしまっている。


 そして、試合開始の午後6時15分を迎えた若き外野手の音石一博おといし・かずひろ(25)は、これから始まる暗黒の7年間unlucky sevenと関係者の間で称される、前代未聞の7年連続最下位と云う不名誉な記録の樹立に寄与したA級戦犯選手としてのキャリアをスタートさせたのだった。

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No.7 澤田啓 @Kei_Sawada4247

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