◇coffee time◇  🍵 ほっと一息

 いやいや、ちょっと待ってもらいたい。コーヒーを飲んでいる場合ではない。先程、私は重要な過ちを犯した。いや、物語の中ではない。「まえがき」で。私は最後に孤高の素人作家でありたいと述べたが、取り消す。素人のままは嫌です。


 ところで、勘の良い読者諸氏は既にお気付きのことと思うが、本作の各話の小題は「KAC2023」のお題になっている。これは、参加には間に合わなかったけれど、俺だってお題でも書けるんだぜ的な、いいわけじみた主張ではない。


 主張といえば、これは私の実に個人的な願望であり、主張と言えるものか分からないが、述べておきたいことがある。波状攻撃的に出題する「KAC2023」という企画で速筆の作者を探すのは理解できるが、対局にも目配せをして欲しい。


 「拙速を尊べ」と言われるのも事実である。だが、速さだけが能力の基準ではあるまい。遅筆だが時間を与えれば傑作を書く人の方が同じ期間で凡作を数本書くしかできない人よりも貴重といえる。能力の優劣は局面により異なるはずだ。


 何が言いたいのかというと、お題を連発して短距離走を何本もこなさせる企画を立てたなら、同時に、その期間にお題一つで肉厚の中編ないし長編を募集する中距離走か長距離走の企画も実施して欲しいということだ。


 確かに、短編を書くことで無駄な描写の省き方や起承転結の構成力、物語のテンポの作り方など、書き方の訓練となり、また、勉強にもなる事が多いのは事実である。企画を否定するつもりは全くない。しかし、長編も書かねば上達しまい。


 中編や長編には、全体のリズムや盛り上げ処の置き方、情景描写の妙などの独特の技術が必要だと思う。私は傑作長編を書けていないが、職業作家を夢見る以上、短編独特の無理な言葉の詰め方が癖づくと長編執筆に支障が出まいか心配だ。


 以上、各節を百八字で綴った私の煩悩でした。

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