不幸な7月7日に願うこと

里場むすび

第1話


 7月7日——七夕は不幸の日だ。


 小学生の頃、ゲームセンターのスロットで777が出た。その代償と言わんばかりに、長生きしてほしいと思っていた両親はその日の晩に事故で死んだ。

 中学生の頃、返却されたテストが全部77点だった。好きだった男子は、廊下の窓から転落して意識不明になった。


 こんなふうに、毎年の七夕は私の身の回りの人々に不幸が降りかかる日だった。それも、私の願いや祈りが、反転した結果として。


 そして今日は17歳の7月7日だ。

 できることなら何もせず、何も思わず今日をやり過ごそうと、思っていたのだけど——


「おはようございます。お嬢様」


 ……困ったことに、現在の私はとんでもない金持ちの養女になってしまっていた。昨年の七夕、不幸と同時に訪れた幸運がこれだった。

 といっても、私にとっては不幸でしかない。


 だって24時間、ずっと専属メイドからの視線を感じ続ける生活は、苦しい……!!


 だから、私は今日、長年私を苛んできた不幸を以てこの不幸を終わらせる。

 着替え中、私はメイドに言う。


「あなたは、これからもずっと私のそばにいてね。絶対に、私から離れたりしないでね」

「……ありがたき御言葉」


 私が願ったことは今日、反転する——!

 これできっと、彼女は私と離れ離れに、なる! なってくれる!


 ……なんて見通しは、まったくもって甘いものだった。

 不幸は起きた。それも、17という年齢のせいだろうか、例年より数も量も凄まじいことになっていた。

 なのに、私の専属メイドはあらゆる不幸を撥ね除けてしまった。


 そうして、夜。23時57分。私は訊いてみることにした。今日一日、どうしてあんなに頑張ってくれたのか。ハプニングだらけで大変な一日だったのに——と。


 メイドは微笑んで応えた。

 滅多に笑わない彼女のその表情に、どきりとする。


「今朝。お嬢様に頂いた御言葉のおかげですよ」


 ああ、これは叶わない——。


(了)

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不幸な7月7日に願うこと 里場むすび @musmusbi

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