好きな人の好きな人が亡くなった話

サンドリヨン

そばで見守ることしかできない

好きな人の好きな人が亡くなった。

彼女は酷く悲しんでいる。見ているのがつらくなるほど。

私はずっと彼女のそばにいた。

彼女にまた元気になってほしくて、太陽のような笑顔を見せてほしくて。

「そんなに好きだったの?」と聞いても返事は返ってこない。

「どんなところが好きだったの?」と聞いても返事は返ってこない。

「早く元気になってよ。また笑って・・・」と言っても、彼女は泣いているだけだった。

 扉からノックの音がする。今日も彼女のお母さんが、ご飯を持ってくる。彼女はいつも生きていくのに最低限の量だけを食べる。やせ細っていく彼女を見ていると私まで泣きそうになってしまう。

 三日間、ずっと泣いていた彼女がおもむろに動いた。手に取っていたのはアルバムだった。好きな人との思い出を見返しているのか、少しだけ、懐かしむような、見ていて切なくなるような笑みを浮かべていた。アルバムを覗く。小学校の運動会、中学校の合唱コンクール、一緒に食べたお弁当、部活動のことで喧嘩した日のこと、今でも鮮明に思い出せる。

 彼女が次に持ってきたのは、日記だった。アルバムに比べたら覗くのは気が引ける。でも今を逃したらずっと、見れない気がした。

 日付は二年前、始めて手をつないだことが書かれていた。良い雰囲気だったのに、告白できなかったことを悔やんでいた。一日一日の彼女と好きな人との思い出が積み重なっていた。日付は四日前、卒業式のタイミングで絶対に告白する!そんなことが丸っこくて彼女の人柄が出ているような優しい字で書かれていた。

 時間は既に深夜になっていた。日記を読み終わると、部屋から彼女が出る。トイレだろうと思っていたが、戻ってこない。玄関に行く。靴がない。まずい。そう思うと私は壁をすり抜け、走り出す。

 彼女を見つけたときにはもう遅く、私と同じ姿になっていた。

 ヒマワリのような笑顔を浮かべ彼女は言う。

「大好き!」

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