第24話 帰省

 支社からタクシーで更に西へ進んで、実家の神社へ。『神崎神社』と言うのがウチの神社であり、母親の旧姓も『神崎』だ。父さんは現在海外赴任中、母さんは神社の手伝いに行っていて家には誰もいない。鍵は持っていたので勝手に玄関を開け、荷物だけ置いてから神社の方へ。今日、明日と祭りがあるので、出店が立ち並んでいて準備の人も多い。


「おー、祭りか!?」

「はい。それに合わせて帰ってきましたからね。花火も上がるんですよ」

「これは帰ってきた甲斐があったのう、楽しみじゃ。浴衣でも持ってくればよかったのう」

「多分、言えば母さんが準備してくれると思いますよ」


 二人で社務所の方に歩いていくと、お手伝いに来ていたであろう近所のおばさまたちと固まって話している母親の姿が。


「母さん、ただいま」

「あら、聖也! 早かったじゃない。ちょうど良かったわ。あんたも手伝ってちょうだい。手がいくらあっても足りないんだから」

「そう言われると思ったよ」

「そちらは?」


 当然詩織さんに気がついて、興味津々な母親。周りのおばさま方も同様だ。


「聖也さんとお付き合いさせて頂いている、光原詩織と申します。はじめまして、お母様」


 名字、光原って言うの!? いや、それよりも『詩織じゃ!』とかいつもの口調で言うのかと持ったら、ここはちゃんと演技してくれた詩織さん。


「まぁ、まぁ、まぁ!! 聖也とお付き合いを!? 冴えない感じのあんたに、こんな美人な彼女ができたなんて! 何か犯罪でも犯したんじゃないでしょうね!?」

「冴えないは余計だろう! それに犯罪なんて犯してないから! 会社の先輩の紹介で知り合ったんだよ!」

「あの聖也くんに彼女が!? 都会の女性はオシャレね!」

「ウチの子が悔しがるねえ」


 皆口々に言いたいことを言って、おばさまたちにバシバシ叩かれる。その様子を優しい笑顔を作って見ていた詩織さん。まあ、これで洗礼は済んだかな? ちょうど昼時だったこともあり、母親とおばさま方と一緒に昼食をとることに。こういう時は大体出前で寿司が注文してあって、社務所の横にある集会場に行くとテーブル上に寿司などが並べられていた。残念ながらお酒はないですが。


「じいちゃんは?」

「父さんなら出掛けてるわ。夕方には帰ってくるんじゃないかしら? それにしても美人よね、詩織さん。お仕事はモデルか何かかしら?」

「いえ、普通のOLですわ」


 流石に僕の部屋で引きこもりの様なことをしてるとは言えないですよね。そう思っていると、ちょっと不満顔の詩織さんに睨まれてしまった。


「聖也さん、何か?」

「あ、いえ。何でもないですよ。それより母さん、今夜の祭り用に詩織さんの浴衣って準備できる?」

「もちろん! あんたは?」

「僕は手伝いもあるからいいや。詩織さん、すみませんが僕はちょっとバタバタしますので、部屋で休んでいてもらえますか?」

「はい」


 知らぬ土地で一人にするのはちょっと申し訳ない気もしたけど、神様だし普段も僕の部屋で一人で過ごしているから大丈夫ですよね? 何かあったらスマホでいいので連絡してくださいね、詩織さん。

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