第16話 執筆環境
詩織さんの助言もあって、執筆前の設定もなんとか出来上がり、いざ執筆開始! 当初は設定もカクヨムの自分のページに書き込んで下書き保存していたけれど、階層化しにくかったり並べて見にくかったりで断念。あれこれクラウド共有できるアプリなどを探してみたけど段々面倒になってきて、メインの執筆環境はノートパソコンとし外でチェックしたい場合はクラウドで共有できるメモアプリにコピーすることにする。僕は基本的にスマホで長文入力しないから、外でバリバリ書くわけでもないしね。
それと執筆後の推敲ツール。パソコン用にインストールできるものが一つと、WEBサイトで実行できるものが一つ。取り敢えずはこの二つでダブルチェックして、『表記のゆれ』などをなくす様にしよう。最近流行りのAIでいい感じに……と思ったけど、そこまでチェックしてくれるサイトは見つからなかったし、詩織さんも知らないとのことだった。
『環境』と言えば、パソコンやらスマホやら以前に部屋の環境だ。詩織さんと同居し始めたので、リビングにいる時はほぼ詩織さんと一緒。詩織さんも僕が小説を書くことは知っているからいいと言えばいいんだけど……集中したいときは僕が寝室に移動するか、あるいは出掛けてカフェなりで執筆するか。幸いノートパソコンは比較的軽量なものを選んだので移動自体は問題ないけれど……そう思っていると、僕がリビングで執筆を始めたら詩織さんが寝室に移動してくれる。気を使ってもらってるみたいだ。
「文芸の神が執筆の邪魔をするのも、おかしな話じゃろう? 集中して書くがよいぞ」
「お気遣い、有り難うございます」
同居したのが詩織さんで良かったのかも……他の神様だと邪魔されるかも知れないし。もちろん、一日中詩織さんを放置しているわけではなく、休日には良く一緒に出かけることも増えた。あと、課長が頻繁に家へ来るように。目的はもちろん詩織さんとの宴会だけど、普通部下の家に課長がそんな頻繁にくることってないですよね!?
「今夜はお好み焼きじゃな!」
「そう言えば詩織さんが来てから焼いてなかったなーと思って」
「ビールに合いそうね!」
そして今日も来てる……明日は土曜日だからいいんですけど、あんまり僕の部屋に来すぎたら、他の神様に怪しまれませんか? 課の他のメンバーにバレたら皆来るようになったりして……この狭い部屋が神様だらけになるのはちょっと怖いなあ。
「ところで遠藤くん、もう小説は書いてるの?」
「はい。なかなか思うように書き進められてはいませんが、少しずつ。書くのって予想以上に難しいもんですね」
「そうね。自分の形ができるまではなかなか文字数も増えないかな。ここに会話文を挟もうとか、ここはもうちょっと詳しく描写しようとか……あとは視点によって書き方も変わってくるし」
「それも含めて書く楽しみと言うもんじゃろ? 誰しもいきなり達人の様に書けるわけではないからのう。まずは一本書き切ることが大切じゃ」
「そうですね。出来上がった後のことをあれこれ考えても仕方ないので、とにかく思った通りに書き切るように頑張ります!」
「遠藤くんはこういう時も真面目よね。楽しみにしてるから」
課長に楽しみにされるのもちょっと怖いんだけど……でもまあ、最初に読んでもらうのは詩織さんと課長、二人の神様に決まりだ。これはある意味凄く幸運なのことなのかも知れない。なんせ、神様ですからね!
お好み焼きを何枚か焼いて、追加で焼きそばも焼いてワイワイと盛り上がってると、話は日曜日
の宴会の話になった。桜のシーズンだし、我が社恒例のお花見宴会。これには社員がほぼ全員参加なんだけど、今から考えると神様たちが宴会好きだからなのか? 凄く良い場所なんだけど毎年場所取りも必要なく、会社の人たち以外は誰もいない穴場。
「いつもの宴会場所って、神様だけが知ってるの穴場スポットってことなんですかね」
「そう言うことよ。普通は人が入れない空間なんだけど、我が社の社員は特別ね。つまり、君は特別」
「人間は僕一人ですもんね」
「詩織、あなたもいしゃっしゃいよ。お花見しながらお酒飲み放題よ!」
「おー、それは良いのう。しかし、私が行っても大丈夫か?」
「んー、まあ大丈夫じゃない? 皆ビックリはするでしょうけど」
詩織さんが参加すると皆ビックリするんだ。それだけ有名な神ってことなのかな?
「詩織さんって、実は凄い神様なんですか?」
「私か? 大したことないぞ。フラフラしているから、名前は知られておるかも知れんがの」
「フフフ、遠藤くんも一緒に参加すれば分かるわよ」
結局詳細は教えて貰えなかったが、まあ行ってみたら分かるかな。詩織さんは宴会の場所を知らないので、その日は詩織さんと待ち合わせして一緒に行くことになった。今夜のお好み焼きパーティー後は神様二人がまた話し込んでいて、嫌な予感がしながらも僕が先に寝る展開。そして翌朝起きると、やっぱり二人の神様に両側からしがみつかれていた……もう慣れました。
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