第12話 『神』作家さん

 すき焼きとお酒で課長の舌も滑らかになって、詩織さんとの会話も弾む。課長は僕が詩織さんと同居していることを知らずに、詩織さんとメッセージアプリで結構話をしていた様だ。


「ほれ、神でも祭りに参加している者もいると言っていたじゃろう? それがこの七緒じゃ」

「えーっ! 課長、小説とか書くんですか!?」

「な、なによ! これでも結構文章は書いてるんですからね! まあ、最初は二次創作から入ったけど」


 なんで神様が二次創作とかやってるんですか!? また僕の神様に対するイメージが……


「じゃあ、カクヨムコンの中間選考通ったって神様も課長ですか?」

「そうよ。今回は結構頑張ったからね!」

「凄いですね! 課長の書いた小説、読みたいです!」

「ダメ! 他の情報については教えてあげるけど、ペンネームは教えないからね! こっそりやってるのが楽しいんだから」


 こっそりも何も、もうバレちゃってるじゃないですか。まあ、僕も身近な人に読まれるのはちょっと恥ずかしいから、気持ちが分からなくもないけど。でも折角だから、色々聞いてみることにする。


「課長はなんでオリジナルの小説を書こうと思ったんですか? やっぱり『祭り』だからですか?」

「まあそれもあるけど、自分で書いたものが誰かに読んでもらえるのって嬉しいじゃない?」

「会社の皆さん……神様たちに宣伝すればイッパイ読んでもらえそうな気もしますが」

「二次創作もそうだけど、書いてるジャンルがちょっと、ね。ギャップがあると言うから」


 神様でもそう言うことを気にするもんなんですね。それにしても課長のイメージとギャップがある小説って……神様だから本当に神様に関する歴史ものみたいなのを書いてるのかとも思ったけど、そうではないらしい。ひょっとして課長って意外とオタクだったり!?


「こやつは恋愛ものが好きらしいぞ」

「あーっ! 余計なこと言わないの! べ、別にいいでしょう、好きなんだから」

「アハハ、別にダメともなんと言ってないじゃないですか。恋愛かあ……やっぱり神様同士の恋愛とかもあるんですか?」

「古来より、神々は恋愛して子供を作って……と言う話が人間界で広がっておるじゃろう。まあ原初の神々はそうだったかも知れんが最近は神々も増えたから、神同士の恋愛はあまり聞かんな」

「まあ、ないわけではないけどね。色々面倒なのよ、手続きとか。それに、詩織みたいに気ままな神も多いからね。そう言う神はカップルになって拘束されるのを嫌がるってわけよ」

「それはお主も一緒じゃろう?」


 神様同士の恋愛とか結婚で手続きが必要なんですか。やっぱり市役所みたいな場所があって婚姻届けとか出すんだろうか。神々は気ままか……まあ、それは何となく分かる気がするなあ、特に詩織さんは。あ、それじゃあ人と神様の恋愛は? と聞こうとして止める。現状、詩織さんと同居している状態でなんか面倒なことを言われても困るので。僕は極力そう言う関係にならないように自制しなければ! そう決意したのに……


「神と人なら恋仲になるのもアリなんじゃぞ。どうじゃ、聖也?」


と、意地悪そうな顔をしながら詩織さんがジャージのジッパーを下ろす。


「ちょっと! ウチの大事な従業員なんですからね! 本当に魅入ったりしたら承知しないわよ! 大体なんで遠藤くんはあんなに強烈な神の気配を纏ってたわけ?」

「そりゃ毎晩一緒に寝ておるからの」

「!?」


 課長に凄い顔で睨まれた。いやいやいやいや、何も手出ししてませんからね!


「ヤったってこと!?」

「ヤってませんから! 何もしてませんからね! 僕が寝てると詩織さんが布団に入ってくるんです!」

「フォフォフォ、人肌恋しいんじゃ」

「とにかく! 人と神だって付き合うとそれなりに問題になるんだから、どっちかと言うと詩織が自制しなさいよ! 遠藤くんも危なくなったらこいつを追い出していいから!」


 問題ってなんだ……と思いつつ、課長の剣幕におされてそれ以上は突っ込まないことにする。もっと課長の創作活動について聞きたかったのに、お酒の入った神様二人で話が盛り上がっちゃって、僕は聞き役に徹することにしたのだった。ところで……凄い勢いで二人共お酒飲んでますが、課長、今夜ここに泊まるつもりですか!?

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