トレジャーハンター【ラッキー7】

水城みつは

【ラッキー7】

「串焼きー、2つで6₫ー」

「朝採れのマンドラゴラー、新鮮だよー」

人で賑わう朝市は耳を塞ぎたいぐらいに喧しい。


この国には竜の遺跡と呼ばれる宝箱ダンジョンがある。

【ラッキー7】の二つ名で知られる俺を呼んでいるに違いない。


 竜人のおばちゃんが串焼きを焼いている。

「おばちゃん、串焼き4つおくれ。急ぎで」

なんの肉か分からないが、食欲をそそるいい匂いがしている。

「あー、これで最後だね、3つしかないけど良いかい?

2₫まけて10₫にしとくよ」

指を3つ折り曲げてアピールしてきた。

竜がデザインされた₫貨を渡す。

「まいどありー、幸運がありますように」

ちょっと驚いた顔したおばちゃんがニコニコと串を渡してきた。

ジューシーな肉を頬張りながら遺跡へと急ぐ。


 俺の持つ神器【カードの7】は7にまつわる事象によって連鎖的に運を上げるとされている。

しかし、今日に限っては連鎖的に運が下がっている気すらする。

小さな小石に躓くことから始まり、終いには宝箱を目の前にして、転移罠でダンジョン外に放り出された。


こんな日は早々に引き上げて寝るに限る。

まだ少し早いが、見つけた定食屋に入ることにした。

―― エール3₫、定食5₫ とある。

「エールと定食を頼む」

暇そうにしていた親父に声をかけた。

「あいよ、セットで11₫だ」

「あ、高くないか?」

この親父、足し算もできないのか?

「兄さん、よそ者だろ、」

よそ者は割高ってことか……

「この国では、他所とは違って、6の次は10だ。11₫は他国で言うところの8₫だよ」

「ふぁ?」

頭の中が?でいっぱいになる。

親父が説明してくれた。

「ドラゴンは進化して格が上がると指が増えるんだ。そして、こんな言い伝えがある」

―― 6本指の竜王の眷属として我々竜族が生まれた。

   そして、神に成り代わろうとした7本指の竜神は滅ぼされた。

   それ以来、【アンラッキー7】として7は使われなくなった。




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トレジャーハンター【ラッキー7】 水城みつは @mituha

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