戦え! 僕らのアンラッキー7!

夢空

第1話

 ここはとある町の浄水場。そこに異形の者達が列をなしていた。彼らは世界征服組織、ヴァダール。今まさに、その世界征服の第一歩が行われようとしている。


「ふふふ、水は生きとしていける者の生命線。つまりここを押さえる事ができれば市民の命を握ったも同然というものよ。そして我が組織が開発した催眠剤、イノママニナールを水に混ぜる事により、この水を飲んだ者は我が組織の忠実なる下僕となる。まさに完璧な作戦よ!」


 ヴァダールの参謀、ジャイルは声高々に口上を述べた。なんという恐ろしき作戦。誰か彼らを妨げる者はいないのか!?


「待てい!」


 その時、何者かの声が響き渡る。そして目の前に緑色の戦隊モノスーツを来た人物が飛び出してきた。


「アンラッキーグリーン! アンラッキー7参上! 我々が来たからには……」


「待て待て待て待て」


 アンラッキーグリーンと名乗った口上をジャイルが遮った。はあ、と大きくため息を吐くとジャイルはアンラッキーグリーンに話しかける。


「今度は一人だけか! もう戦隊じゃないだろ! 他の連中はどうした!」


「えっと、レッドは食中毒でトイレから出られず、ブルーは二股がバレてそれどころじゃないって。あとイエローは財布を落として……」


「もういい! いい加減、ちゃんと7人で来い! 大体全員が不幸体質だからって7人は多すぎなんだよ。それだけ集めても結局今回だってお前一人じゃないか!」


「いや、そんなこと言われても……」


 モゴモゴと口を動かすアンラッキーグリーン。そんな哀れな状況を見かねてか、ジャイルは一つの提案をした。


「とりあえず、やるか? 対決?」


「い、いいのか!」


「せっかくお前は来たんだしやってやるよ。……コホン、現れたなアンラッキー7! ゆけ、我らが怪人グレートアームズよ! そのビルさえ破壊する巨腕で奴を倒してみせよ!」


「ウオオオオォォォォォ!」


 そう言って現れたのは身の丈5mはあろうかという巨大な怪人だった。名前の通り、異常に発達した巨腕はまともにくらえばひとたまりもないだろう。


「上等だ! いくぞ、グレートアームズ!」


 アンラッキーグリーンがグレートアームズに向かって飛びかかる。その時だった。空から何かが降ってきてアンラッキーグリーンのヘルメットに直撃する。ヘルメットは粉々に砕け、グリーンは凄まじい勢いで吹っ飛んだ。


 ジャイルが慌ててアンラッキーグリーンに駆け寄る。


「え、なに隕石? 大丈夫? 無理? あ、そう……」


 ジャイルは頭を抱えると、怪人達に叫ぶ。


「もうやめやめ! こんなんじゃ世界征服した気にならない! 今日は解散!」


 ジャイルの号令を皮切りに、怪人達は散り散りに去っていく。後に残されたのはアンラッキーグリーンのみ。


 世界の平和を守るため、戦えアンラッキー7! あとアンラッキーグリーンはすぐに病院にいってね。

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