おそらく、婚約破棄物

どくいも

7要素を無理やり入れていくスタイル


「ナナ・ラッキアーノ!君との関係ももううんざりだ!

 貴女との婚約を破棄させてもらう!!」


それはここから遠いとある国。

そこで行われたパーティでの一幕である。


声の主はこの国の皇太子。

プラチナブロンドの髪に灼熱の赤い瞳をした王族らしい美形の王子である。

性格はお人好しで知られ、平民も貴族にも分け隔てなくやさしく、誰にでも平等に接する。

さらには日々努力を惜しまず、王立学園でも高い人気を誇ったそんな人物だ。


「そ、そんな……」


それに対して、婚約破棄をされた側は、ナナ・ラッキアーノ。

この国の7代貴族に属し、その空のような青髪と透き通る瞳は多くの者を魅了し狂わせる。


この国でもこの2人は特に人気であり、この2人の関係性も祖と眼から見ても悪い物とは思えない。

それなのに、皇太子がこんな公衆の面前で、このような宣言をするなんて……。


「なぜ、なぜなのですか!?

 王子様、なぜそのようなひどいことを言うのですか!?」




「そんなの簡単だ。

 ……君が、実は男で!!

 しかも、僕の周りに近づいた、女の子たちを次々と寝取ったからだよぉぉぉ!!!」


なお、理由はものすごく妥当だった模様。


「え、いまさらそんなことを?

 しかも、次々って、実際に手を出したのはせいぜい6……いや、7人くらいですよ。

 それくらい軽い軽い」


「おま、おま、おまえええぇええええ!!!」


なお、ナナはそれに対して、さらに救いようのない弁明をした模様。


「おまえさぁ!!!

 そもそもが男のくせに国の皇太子の婚約者とかその時点でおかしいんだよ?

 それなのにさぁ、何へ依然と俺の周りの女の子を襲っちゃっているの?

 しかも性的な意味で、貞操とかそういうのをブッチして!?」


「安心してください、王子。

 私はちゃんと正式に婚姻を済ませた日には、性転換薬でちゃんと女となる。

 そもそも、穴すらないから、処女のままなのは確定です!」


「そういう問題じゃねぇよ!

 というかお前、よく聞いたら、7人も、7人にも手を出していたの!?」


「あ、やっべ……

 で、でも安心してください!ちゃんとこれらは、お義父様公認ですので!」


「そうだね~、婚約者公認で、安全に純潔を主張出来るもんね~。

 っておばか!!!そっちの方が知りたくなかったわ!」


思わず頭を抱える皇太子。

それを心配するため、近づこうとするがその手をはたきおとされる元婚約者のナナ。


「そんな……ひどい……」


「ひどくもないわ!

 むしろ、僕のほうがかわいそうだろ!?」


「でも、いいのですか?

 私はあなたのお義父様、王公認の婚約者ですよ?それなのに婚約破棄とは……。

 今ならまだ、撤回しても許してあげますよ?」


「流石にこれは、俺怒ってもいいよね!?

 それにすでに、君の代わりの婚約者は既に存在する!」


その言葉とともに、皇太子の後ろから一人の女性が現れる。


「そう!彼女こそが僕の新しい婚約者!

 エイ・ラッキアーノだ!」


「そ、そんな……!!」


そうして現れたのは、ラッキアーノ家で2番目に美しいといわれている、美女。

ナナよりも、やや小柄でありながら、その胸はきちんと豊満。

この2人ほどではないが、国の中の国民から、それなりに高い人気を誇っている、そんな令嬢であった。

そして、そんなエイ・ラッキアーノのを見て、ナナは強く抗議の声を上げた。


「で、でも、彼女は私の妹ですよ!」


「ああ!もちろんわかっている!」


「それに、エイは女の子ですよ!」


「それでいいんだよ!

 むしろ、後で性転換薬を使うとはいえ、今まで婚約者が男だったほうがおかしいんだよぉ!」


強い抗議を上げるナナに、反論する皇太子。

それを2人のやり取りを、静かな眼で見つめる新婚約者エイ。




「なによりも、エイは先日私が抱いたばかり!

 つまりは非処女ですが、それでもいいんですか!?」


「それでも問題な……、って、え?

 今なんて言った?」


そして、さらなる爆弾が投下された。


「え、おま、おまえ、自分がなんて言ったかわかってるの??」


「ええ、皇太子さま。

 それはもちろん、エイは先日、皇太子さまに婚約者の妹の立場を利用して、必要以上に近づこうとしたので。

 ちょっとした警告のために、三日は足腰が立たなくなるくらいに、わからせてあげました」


「兄妹なのに、それはいいのか!?」


「皇太子さまの純潔を守るためならば致し方なしです。

 ……それにしても、このお人よしの皇太子様が、なぜ私と義父様の純潔保護作戦に気が付いたかと思えば……。

 エイが原因でしたか」


エイのほうをまるで、親の仇のような目で見つめるナナ。

今まで見たことのない、元婚約者の殺意に満ちた瞳に本気でビビる皇太子。

様子の変わらないエイ。


「だ、だまされないぞ!そ、そんなことを言って、エイと私の仲を引き裂こうとしてるのだろう!

 そうだよな、エイ!?」


「お兄様がいけないのですよ。

 私の穴という穴を犯しつくしながら、キスだけはしてくれなかったから……」


「エイィィィィィ!!!!」


思わず、床を思いっきり叩く皇太子。

周りの観衆や貴族たちもどうすればいいかと戸惑いながらも、手を出せずにいた。


「エイ、君のした罪は非常に重い。

 君のせいで、皇太子さまは真実……ごほん、いらない疑いをもたれてしまった。

 ここで君を投獄し、今回の件はなかったことにする」


「いまさら、そんなことができると思うの??」


「つまり、皇太子さまに見られながら、兄さまに殺してもらえる……ってこと!?」


「なんでお前はお前でうれしそうなんだよぉぉぉ!!!」


かくして、この日の立食パーティは中止に。

この後宮殿内で流行り病が流行し、多くの死者や喉をやられてしまった人が発生。

不幸中の幸い、この流行り病のせいで、この日の出来事が外部に広まることはなく、王国の権威は保たれ続けたのでしたとさ。


「というわけで、私達は婚約者のままですって♪

 よかったですね」


「どうして……どうして……」





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