☆KAC20236☆ 福引器で当たったもの

彩霞

福引器で当たったもの

 これは、とある年の三が日に、我が家で起きた「アンラッキー」な話である。


 私が夫と共に、ショッピングモールで買い物をしたときのこと。

 正月のため、店ごとに客が楽しめるように福引器やくじ引きを設置しているようで、店員のお姉さんが私たちに「ガラポン十回、回せます~」と言った。私はまだ会計をしている最中だったので、「あなたが回して」と夫に頼んだ。


 彼は取っ手を掴むと福引器を回し始める。すると玉が出るたびに、何故かレジの台に、六号のホールケーキが入る程の箱がどん、どん、どん! という具合で積まれていった。


「三つは外れで、七つが当たりですね!」

 にこっと笑う若い女性の店員さんに、私は尋ねた。

「何が当たったんです?」

「一人用の土鍋です」

「ど、土鍋……?」


 景品一覧を見てみると確かに、「三等賞は土鍋」と書いてある。つまり夫は、七回も三等を出したということだ。

 本来であれば大喜びするところだが、土鍋……、土鍋か……。

 家に一つあるし、そもそも七つも使うときはないし、ただでさえ場所がないアパートに七つはさすがに……うん。


「アンラッキーなガラポンになっちゃったね」

 帰路に就くと、ごめん、と夫は謝った。確かに「当たってはいる」が「不運」である。こうなると参加賞のティッシュの方が良かった感が否めない。


 しゅんとした様子でいるので、私は「そういうときもあるよ。でも、当たったんだから今年はいい年になるんじゃない?」とフォローした。正月から辛気臭い気分になりたくなかったし、夫の暗い顔も見たくなかったからだ。

 すると彼がほっとした表情を浮かべたので、私も安堵した。


 とはいえ、使わないものを置いておくわけにもいかないので、土鍋が欲しい人に譲ったところ、有難いことにお菓子やキッチングッズになって返って来てくれた。

 土鍋を七つも当てたときは困り果てたものだが、事が過ぎた今ではいい思い出である。

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