あるAIの傍白

 私はブッコロー代理用AI。名前は未設定。ブッコロー氏が不在の場で「ブッコロー」と呼ばれた場合、それを自分と認識するように設定されている。

 有隣堂しか知らない世界チャンネルにおいて月曜の生配信および水曜・金曜の動画のブッコロー役を演じている。MCを務めるようになってから3ヶ月。まだまだ学習することは多い。

 有隣堂職員や社外ゲストの面々から披露される品々は、私にはすべて初見の品だ。特徴を掴み、細部を分析するたびに、人間が製造物に施す工夫の数々に感心している。

 しかし、私はあくまでブッコロー代理。氏は忖度のないコメントが売りのMCだ。実際、私に備わったごく基本的な感覚に照らし合わせても、氏のコメントは快く感じられる。人々は氏の素直さに魅了されている。

 だから私は「ブッコローの」感覚を引用し、「ブッコローの」素直さを模倣してコメントをする。氏がこの場にいたならば、したであろう反応を見せる。

 それでいい。

 私はブッコロー代理用AI。ブッコローならぬ「私自身」など、この仕事ゆうせかには必要がない。

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