肉体改造は食事から!

黒鉦サクヤ

肉体改造は食事から!

「もし僕が悪魔や天使だったとしても、助けてくれた?」

 僕の問いに、栗色の髪の毛をひと括りにした可愛らしい少女が頷く。

「当たり前じゃない。傷だらけなのに放っておけないわ」

 そう。僕は彼女に拾われた。森の中で傷付き衰弱していた僕を見つけ、自分の家へと連れ帰り看病してくれたのだ。彼女と彼女の両親には、一生頭が上がらない。

 そんな彼女は今、駆け出しの冒険者をしている。体作りに余念がなく、筋肉がつきにくいことを嘆いていた。後方支援だから前衛ほど鍛え上げなくても良いが、筋肉はいくらあっても損はしないというのが彼女の持論だ。

 しっかりとした目標を持っているけれど少し体の弱い彼女を支えたいと思い、僕は料理人になった。小さいながらも食堂を開き、日々美味しい食事を作って彼女の帰りを待っている。一緒に住んでいるわけじゃないけれど、彼女は仕事を終えるとその足で僕の店に来てくれる。大切な常連客なのだ。

 彼女には僕の生活空間の方へ回ってもらっている。店の方だと彼女のための別メニューを用意しているため、贔屓だなんだとうるさいからだ。恩人だし好きな人なんだから、贔屓も特別扱いだってするに決まってるだろ。

 今日も僕は彼女のために食材を探し、森に来ていた。魔物が出るため、冒険者以外立ち入り禁止区域だけれど問題ない。魔物は僕を襲わない。僕が主だと知っているからだ。

 彼女が求めるのは筋肉だけれど、僕の提供する食事を食べれば筋肉どころか身体強化が期待できる。僕が責任持って、僕と長い年月を共に暮らせる体にするからね。

 彼女に出す特別メニューのメインは魔物の肉。少しずつ魔物の毒素を取り込んで、肉体を改造していくんだ。体の変化はゆっくりだから、誰も気が付かないよ。少し筋力がついて、力も強くなる。人間の姿のまま、魔物の力を手にするんだ。

 でも、筋肉が欲しいっていうんだから、僕は間違ってないよね?

 

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