【GL】長年培った年下甘やかし属性を捨てられない彼女に甘やかし年上彼女ができる話

葉っぱ

第1話 恋愛プロフェッショナル崩れ

 「はぁ。。花粉症、しんどっ!」


 今日何度目かわからない鼻をかみ、目に熱いおしぼりをあててうなだれる。


 昨日初めて花粉症になった。2日目になって症状の改善はみられず、会社には午後休を願い出た。今はとりあえずランチを食べながら会社近くの内科をネットで検索しようと一人でカフェにいる。


「これじゃ食欲も出ないんだよなぁ…。味がしないんだもん。。」


 軽めのサンドイッチとコーヒーを頼んだ。


 私は顔が良い。会社では男女ともに目の保養と言われていて、それなのに鼻水止まらず目がしょぼしょぼなもんだから、すんなり「医者行ってこい!」と仕事を休ませてもらえた。


 私は今22歳。就職した中小企業では全員が年上。男女比率は8割が男性。めちゃくちゃに可愛がられてはいるが、実は男性や年上に自分が可愛がられることに慣れていない。


 3姉妹の一番上。長女。


 中高一貫の女子校では、学校一モテる先輩という不動の座を手に入れた。


 高校2,3年が人生のスポットライトだったな。可愛い後輩に囲まれた人生でした…。手作りのお弁当やクッキー、ラブレターもたくさんもらった。後輩と手を繋いで帰った。頭をなでればみんなが顔を赤くした。部活ではファンクラブができた。


たえ先輩、好きです!」というあの子たちの姿が懐かしいよ。手を繋ぎたそうな顔をしている子の手を握れば良かった。キスしたそうな子にキスするだけで良かった。


 進学した付属の短大では高校の時から付き合っていた年下の彼女と長く付き合っていた。彼女の依存や束縛がだんだんと強くなって、しんどくて別れた。今はフリーだ。


 恋愛に関しては常に楽をさせてもらっていたと自分でも思う。


 今となってはそんな運気も尽きたのか、職場と家の往復で出会いがない。でもまぁ、それもここ一年くらいの話だし一人でいるのも悪くない…って、、うん??


 すぐ目の前の4人掛けの席に座る白い制服を着た女性たち。さっきまではマスクをつけていたからわからなかったけど、今はランチが提供されて食べ始めていたからマスクをはずしていた。


 ひときわ目を惹くのはこちらに向いて座っている一人の女性。


「うわっ、か、可愛い。。。」


 まさに理想の女の子。健康的にぷくっとしたあどけない顔。笑うと八重歯が見えてそれも可愛い。ちょっとつり目の大きな目はきつそうな印象ではなくて綺麗。綺麗だけど可愛いってタイプの子。つやっとした茶色い髪は綺麗にまとめられていて首筋が白くて見入ってしまうほど魅力的な、、


「久しぶりに見た…あんなに可愛い子。」


 どこの子だろう?あの制服は学生じゃないよね。医療系の制服といった感じだ。でも18,9歳くらいに見える。バイトかな?


 場所だけは突き止めておきたいと思った。これで会えなくなるのは後悔する気がしたから。私は彼女たちがランチを食べ終えて帰る頃合いを待って、どこで働いているのかだけでも知っておこうと思った。


 さすがに、4人でいるのに声をかけるのはちょっとね。


 しばらくして会社に戻っていくだろう彼女たちのあとをついてくと、すぐに彼女たちは建物の中に入っていった。


 「クリニック…、内科・小児科か。。」


 おおっ!!ラッキー!このまま花粉症で受診できるじゃん!


 私はさっそく、クリニックに入ると、受付で「初めてです、花粉症なんですけど。」と保険証を提示した。問診票を書いたあとで待合室に座り、キョロキョロっとあたりを見渡していると、しばらくして彼女が仕事をし始めたようで他の患者を案内しているのを見つけた。


 彼女の目が一度こちらに向いた。じぃぃ・・・。


 あ、目が合った。しかしすぐに診察室へと消えていく。


 またしばらくすると、私の診察の順番が回ってきた。運良く彼女に「こちら、診察室へどうぞ~。」と声をかけてもらえた。


「あ、はい。」


 診察室に入ると、診察をしてくれるのは年配の男性のようで、彼女はすぐ近くで何やら補助をしているようだ。看護師とか医療補助的な感じなのか?


「花粉症ですね。アレルギー検査をしたことは?」


「ないです。突然昨日から症状がでたもので、。」


「やっておきますか?今はスギですけど、一年中他のアレルギーにも反応出るかも知れませんしね。」


「はい、じゃあお願いします。」


「じゃ、別室でやるのでそっちで待っててくださいね。」


 そう別室に移動するように言われると、例の彼女に案内された。


 つい、じろじろと見てしまうな。


 ああ、かわいいなやっぱり。マスクをつけているから顔が見えないけど、さっき見たもん。雰囲気だけでも最高に可愛いっ!


「はい、じゃあ血液検査しますから腕をまくってくださいね~。」


「ふふ、注射怖いんですか?緊張して見えますけど。」


 彼女がいたずらっぽく笑う。


「いえ、そういうんじゃないです。」


 正直、勢いでここに来たのに思いがけず二人きりになってしまって、なにを言うべきかわからなくて考えていた。すると、テキパキと作業をしながら彼女が、


「さっき、カフェにいましたよね?」


「え、ああ。いました。私ももしかして近くにいた人かな?ってちょっと思ってました。近くの内科を探してたんで、そういう感じかなーって思って見ていたので。」


 しれっとそう言うと、


「ふふ、ホントかな。すごーく、見てた気がするんですけど。」


 !!!!


「そんなことないけど?気のせいじゃないですか?」


「はい、針刺しますよ~。」


 ほんの少し腕にチクッとしたかと思うと、血液が抜かれてあっけなく終わってしまった。どうしようかな、今なにか言わないと診察終わったし、、


「私の気のせいなのかなぁ~?私その手の勘は強いほうなんだけど。ん~、じゃあ、連絡先とかほしいですか?ほしくないですか?」


 彼女が人差し指を唇に当てて、そっと小声でそう言った。


「え?」


「貴方、すごくわかりやすいんだけどな?笑」


 やばい、こんなシチュエーションは経験値にない。ぶわっと顔に血が上るのがわかる。きっと今私の顔は真っ赤なはずだ。


「連絡、、するから…ください…。」


 ここまで来て嘘をつくこともできず俯きながら言ってしまった、、


「ふふっ、19時で仕事終わりだから♪あとで電話してくださいね。」


 そう言って、彼女は紙に書いた電話番号とチャットのIDを私に渡すと、何事もなかったかのように「はい、おつかれさまでしたぁ~。受付でお待ちください。」と言った。


 会計が終わると、クリニックを出てちょっと離れたところまで来て立ち止まった。そして、やっと大きな息を吐く。


「はぁあああああ!!あああ!びっくりした!」


 やばい、やばいやばいやばい。あのシチュエーションは全く免疫がないー!


「あああああ、ドキドキしたっ!」


 ていうか、、あんな可愛い顔して、めちゃくちゃ誘ってくるんじゃん。どういうこと?なんなら学生のバイトかなくらいに思ってたのに、小慣れてない??!


 心臓バクバクいってるんですけど、、、。。


 あれ?おかしいな。今までと違う。今まではどうしてた?


 後輩が、顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしてくるから、私は余裕ぶって、大人な感じで、、、そう、もっとこっちが相手を照れさせる感じで、、、


 連絡するからくださいってなによ?!全然ダメじゃん、口説けてないじゃんっ!


 あ、でもすごい可愛かった。声も。全部がタイプだった。


 19時。そうだ19時だ。連絡しなかったらそれで終わってしまう!19時までに対策を練らなければっ!早くっ!薬飲んで鼻水止めないと!!


 よろめきながら自宅へ向かい歩き出すのだった。 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る