第22話 戦うコック

「にゃん!にゃん!にゃん!にゃん!」


 ニャンコックは、素早い動きで包丁を振り、野菜を刻んでいる。瞬く間に食材を加熱し、絶妙な味付けで料理を仕上げる。周囲には、甘く芳醇な香りが漂い、誰もが食欲をそそられる。


「何かいい匂いするなぁ。」「あれ?あれは誰?」「猫人族の美女だわ。」「あのナイフ捌きは凄くないか?」「ヒビキ君の戦姫?なんじゃない?」


「あっ、蒼天の翼の諸君も来たか。どうだい?凄いだろう?あれは、ヒビキ君の戦姫だそうだよ。」


「何か奇妙な物も色々あるわね。」


「団長!完成したにゃ!」


「了解!ニャンコックありがとう。」

「皆さん、丁度出来た所です。彼女は、ニャンコック。俺の戦姫です。」


「よろしくにゃん。」


「凄くいい匂いがしたので、見に来ちゃったよ。」「でも、見たことのない料理に、奇妙な道具もあるね。」


「説明が非常に難しいですが、スマホマスターの能力ということで納得して貰えますか?」


「そうだな。みんな、ヒビキが困ってる。野暮なことは言いっこなしだ。」


「アインさん。ありがとうございます。では、席について下さい。夕食にしましょう。」


「ああ。それなら、これをセットしよう。」


 アルマさんが、取り出したのは、不思議な形をした石であった。何の用途があるのかは、想像が付かない。


「これは、今回販売する商品の一つ。結界石だ。石から半径5mしか範囲が持たないが、低ランクの魔物なら侵入できない結界だ。」


「それは、凄いですね?因みにおいくらですか?」


「金貨5枚だよ。高いことは高いが、安全の為には必要で、今後は需要が高まる商品だよ。」


「確かに高いけど、冒険者にとったら垂涎物ですね。夜は、安心して寝れそうだわ。」


「では、食事にしましょう。ニャンコック。説明を。」


「団長、はいにゃん!まずは、こちら。オムライスにゃん。米と言う我々の世界の食べ物に、卵を皮の様に繊細に調理して、米の外側に被せてあるにゃん。スプーンですくって食べ下さいにゃん。」


「なにこれ!?美味しい!」「うわぁ。美味い!」「初めての食べ物ですが、大変美味です。」


 口に入れた瞬間、味覚の限界を超えた驚きが俺を襲った。確かに、過去に食べたオムライスとは比べ物にならないほどの美味しさに満ち溢れていた。周囲にいる皆も、その味に満足そうな表情を浮かべている。このオムライスは、彼らの間でも高い評価を得たようだ。


「ありがとうにゃん。次は、隣の皿にゃん。こちらは、ハンバーグにゃん。」


「肉なのか?」「見た目は、奇妙だな。」「食べてみよう。」


 ハンバーグは、俺が熱望して実現した一品である。こちらには、日本で言う豚や牛が、野生の獣として生息しており、王都で購入しておいた物を使用して貰った。日本でいう豚は、こちらではマルポーと言われており、牛は、モウギューと言われている。


「これは、マルポーやモウギューの肉を使って作った、ハンバーグという料理です。」


「マルポーやモウギューだって?」「ちょっと想像付かないよね?」「まあ、食べてみようぜ!」


 俺も辛抱出来ずにパクリと一口。ハンバーグの柔らかな食感と、溢れ出す肉汁が絶妙。肉の甘みに加え、手を加えたハンバーグソースが絶品。非常に美味しかった。転生して今まで食べた物の中で一番美味しいと思う。


「美味ー!!」「肉汁が溢れ出してウマウマ!」「こんな美味しい料理食べたことない。」


 どうやら皆さんには、好評だった様である。夜間の警備は、そのままニャンコックとナビィが引き受けてくれるらしいので、皆さんに通販サイトからワインとおつまみを購入して振舞った。


 皆さん大変感激した様で、大満足な夕食となった。この後、結界石の効果もあったが、ニャンコックとナビィに警備は任せて、全員が就寝した。近づいてきた魔獣は、ニャンコックが殲滅したらしく、朝にはそこそこの魔獣が近くに積み重ねられていた…。


――――


「うわぁ!何だっ!この魔獣の死骸は?」


 朝、目覚めたアインさんがニャンコックが仕留めた魔獣を目撃して大騒ぎしていた。


「リーダーさん、にゃんが仕留めておきましたにゃん!」


「ああ。やはり君が…。昨日は、警備を任せ切りで申し訳無かったね。でも、お陰でゆっくり休めたよ。」


 この後、他のみんなも起き始めて、アインさんと同様な反応を取っていたのだった。俺は、魔獣をストレージに保管しておいた。


「ニャンコック。ありがとう!ニャメと交代するから休んでくれ。また、頼んだよ!」


「団長、了解にゃん。みなさん、またにゃん!」


Shun!


 ニャンコックは、光粒子になって、スマホに帰って行った。そして、すぐに妹のニャメコックを顕現した。


「皆さん、おはようにゃん!今度は、ニャメがお世話するにゃん。」


「え!?ニャンコックさんじゃ?」「…。」「同じ人?それとも別人?」


「こちらは、ニャメコック。ニャンコックの双子の妹だよ。朝食は、ニャメが対応するので期待していて下さい。」


 皆さんの顔に、輝きが宿った。おそらくは、ニャンコックの饗宴が彼らの味覚を満足させたからだろう。俺は、馬の世話を皆さんにお願いし、食事の準備が整うまでテントでのんびりと過ごしてもらった。


「団長!じゃあ、始めるにゃん!」「包丁鬼丸、包丁宗近。二刀流にゃん!」「にゃん!にゃん!にゃん!にゃん!」


 ニャメコックも鮮やかな手捌きで朝食を作り始めた。


 完成したのは、白米に味噌汁。そして焼き魚。


 全員の胃袋を満足させたことは、言うまでもない。


 ―――― to be continued ――――

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