第20話 遠征の準備

「団長!これと、これと、これと、これにゃ。あと…。」


 現在、俺たちは遠征に備えて準備を進めている。食器から調理器具一式まで、ニャンコックが選んでくれたものを使用することになっている。俺自身、調理器具の選び方には疎いため、完全にニャンコックにお任せしているところだ。


 また、ニャンコックも自分が料理をするための道具選びには妥協を許さないようで、こちらの出費も予想以上に膨れ上がっている。しかし、幸いなことに俺たちは無制限のストレージを持っているため、道具の持ち運びには困ることはない。


 食材についても、ニャンコックが主導して購入を済ませた。俺たちはこれ以上の準備は必要ないと判断し、ニャンコックを連れて銀月へ戻ることにした。


(銀月 自室)


「団長!調味料が必要ですにゃあ。とりあえず、醤油、味噌、ソース、胡椒に、塩。カレー粉に調理油を数種類、日本から取り寄せて下さいにゃん?あっ!あと…米と小麦粉もにゃん。」


「え!?日本から?そんなの無理だよ。」


「私は、情報共有で団長の情報は把握してますにゃあ。団長は、先日レベルアップしたにゃん?その際に、"通信サイト"の能力を取得してますにゃん。それを利用すれば、可能にゃん。」


「あー!そういえば…。忘れてたよ。わかった。やってみるよ。」


「北条 響が発動する。スキル"通販サイト"!」


 スマホアプリに通販サイトが自動的にインストールされる。画面に追加されたアイコンがあるので、それをタップする。


 スマホの画面には、"Jungle"と表示された通販サイトが立ち上がった。


「えっ!?マジ?これは、かの有名通販サイトのJungleじゃんか。まだある筈は、ないと思うんだが…。」


「団長。深く考えちゃ駄目にゃん。それより、調味料と食材をよろしくお願いにゃん!」


「わかった。やってみよう。Jungleは、散々使ってたからね。やり方はわかるよ。まずは、醤油な…。えっと、銅貨5枚か。思った程高くないな。なら10本程買っておこうか。」


「おー!買えた買えた。でも、お金は払ってないぞ?」


「団長。通販サイトの支払いは、ストレージと連動しているから、ストレージ内の資金から引かれる仕組みだよ。」


「ナビィか。なるほど。それは便利だね。」


Shun!


「おっ!来たきた!箱まで懐かしのJungleじゃないか。」 


 目の前に出てきたのは、記憶に懐かしいJungleのダンボール箱だった。中身を確認する。ニッコーマンの醤油が10本入っていた。


「凄い。間違いない。めちゃくちゃ便利だな。」


 ニャンコックと試しに味見をしてみると、間違いなく醤油の味がした。俺にとっては、この世界で初めて味わった醤油の味だった。


 思いもよらず、世界や時間を超えてネットショッピングができるとは、夢にも思わなかった。しかし、うまくやり方を見つければ、快適な生活が送れるだけでなく、稼ぎにもなると感じていた。


 その後も、ニャンコック監督の指導のもと、調味料と食材の購入は続いた。

 

(翌日 王都 正門前)


「やあ、来たね。」


 俺は、正門に着いた。蒼天の翼は、俺より先に待機していた。依頼主のアルマさんは、まだ到着して無さそうである。


「今日は、宜しくお願いします。」


「こちらこそ!」


 俺は、蒼天の翼のメンバーと待機することにする。


「あれ?ヒビキは、荷物持ってないの?」


 シーフのリセさんが不思議そうに尋ねた。


「あ、ええ。スト…アイテムボックスがあるから、そちらに…。」


「ふ~ん。そうなんだ。凄いね。」


「アイテムボックス持ちか。依頼中の魔物は、可能な範囲で構わないから保管をお願いできないかな?護衛依頼の場合は、捨てる羽目になるからね。」


 リーダーのアインの提案は、最もである。優先すべきは、依頼人と荷物なので、魔物までは手が回らないのだろう。俺も納得して提案を受けることにした。


「お待たせ~!遅くなってごめんね。」


 馬車が目の前で停車し、御者の人物から声を掛けられた。他に人がいない所を見ると、この方が依頼人のアルマさんなのだろう。


「君達4人が蒼天の翼のメンバーさんで、そこの君がヒビキ君だね?」


「初めてなのに良くわかりますね?」


「そりゃそうよ。人のことをよく見て、しっかり判断するのは、商人の基本だからね。挨拶が遅れたけど、私がアルマ商会のアルマです。今回は、依頼を受けてくれてありがとう。」

 

 依頼主に関する情報は、把握しておくべきだと考え、秘密裏に鑑定アプリを活用して探り出した。彼女は、名を馳せる商会の経営者であり、当初は高齢者のイメージを抱いていたが、彼女自身は30歳という若さであったため、驚嘆せずにはいられなかった。また、彼女は亜人種の狐人族でありながら、俺と大差ない戦闘能力だった為、彼女の安全確保のためには堅固な護衛が欠かせないことが浮き彫りになった。


 アルマさんとの顔合わせが終わったので、早速出発した。


 ヒビキに与えられた初の遠征任務の目的地は、アルスガルドに隣接するナバラム聖王国の王都、マルロムでございました。出発地点であるバランからマルロムまでの距離は約450mに及び、地図上で明確に示されています。これが、ヒビキが新たなる未知へと挑む、はじめての遠征任務の幕開けになるのです。


―――― to be continued ――――

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