第12話 救出作戦 (中編)

「シノブ。内部へ潜入し、現在囚われているララーヌ様をできるだけ安全に救出せよ!行け!」


「はっ!」


 シノブは、瞬く間に内部を駆け抜けていく。その速度は、俺が全力疾走するのと匹敵し、それでいて足音ひとつ立てぬ、まさに忍びの極みである。スキルというよりは超自然的な能力とも思えるその身のこなしに、カレラや兵士たちは感嘆のまなざしを向け、いざという時に備えて身構えている。


 シノブは、巧みな動きで目立たぬように進んでいく。誰もが気づかぬよう、壁際や薄暗い場所を巧みに利用して祭壇へと近づいていく。近くにいる指導者たちですら、その姿を見逃しており、会場中にシノブの存在を察知する者はいない。指導者たちは、自分の思いを語り続ける一方で、シノブの行動に一切気づかないのだった。


 シノブは、ララーヌの元へと辿り着いた。忍者刀を手に、枷を鎖ごと切り断ち、ララーヌを解放した。シノブ自身もステータスがカンストし、カレラには及ばないが高い攻撃力を誇っていた。鎖といった凡庸な障壁など、シノブにとっては取るに足らぬものであった。長い苦痛に耐え続けてきたララーヌの腕は、ついに自由を取り戻したのである。


 近くの指導者は、鎖が断ち切られる音を耳にし、それを敏感に察知した様である。


「カレラ。行け!」


「おしゃー!!」


 勇猛なカレラは気迫を込めて踏み込み、兵士たちも続々とそれに続いて進んでいった。カレラは巧みな動きでシノブのもとへ急ぎ、一方で兵士たちは敵の追撃から退路を守っていた。


「キサマら~!我の生け贄を横取りするとは。許さん!テリトリーフィールド!」「周囲に特殊な結界を構築した。もう逃げたられんぞ!オマエら何してる?皆殺しにしろ!」


「キキー!」


 指導者の声に手前にいたフードを被った者達が立ち上がった。やはり、人間では無さそうだ。ここは、鑑定してみよう。


「北条響が発動する。スキル"鑑定"!」


 鑑定アプリが起動する。俺は、フードの敵集団にカメラを向けて情報を収集する。


名前 子悪魔

年齢 2歳

性別 無し

種族 悪魔

レベル 15

HP 156

MP 140

AT 152

DEF 148

DEX 132

INT 125

AGI 110

スキル なし

説明 生み出されて間もない悪魔。


「そいつらは、悪魔です。皆さん気をつけて下さい。」


「悪魔だと!?実在するのか?」


「はい。鑑定結果です。かなり強いので気をつけて下さい。」「兵士さんは、3人で一体を相手して下さい。」「カレラは、子悪魔を手当り次第殲滅!」


「了解!」


 その間に敵のリーダーの情報も収集しておこう…。鑑定アプリを開いてカメラで相手を映し出す。


名前 アラムスナビ

年齢 421歳

性別 無し

種族 悪魔

レベル 49

HP 600

MP 720

AT 290

MAT 428

DEF 212

DEX 180

INT 268

AGI 152

スキル 不明

説明 3年前よりアルスガルド王国に住み着いた悪魔。アルスガルド王国を影から支配しようと企てている。


(これは、強い。戦姫と大差ない実力だ。ステータス以外の能力が不明なので恐ろしいな。)


「シノブ、ララーヌ様を守りながら速やかに退避。こちらまで来るんだ!」


「御意!」


 8体の小悪魔たちが蠢いていた。兵士たちは、的確な指示の下、3人1組で小悪魔たちを追い詰めていった。3グループが協力して、3匹の小悪魔を次々に討ち取っていく。


「そりゃ!」


Don!


「ギャー!」


「オリャ!」


Ban!


「ギャー!」


 カレラは相変わらず、自らの能力差を巧みに活かし、容易く敵を蹴散らしていた。さらに、彼女と兵士たちの協力により、残された小悪魔たちを全て討伐することに成功した。


「おのれ!よくも仲間を!!」「こうなったらこうだ!スーパーボム!!」


 小さな魔力球が圧縮されたまま、シノブとララーヌさんに向かって飛来してきた。その球体は、徐々に膨張し始め、視界を圧倒するような光を放ち始めた。


「危ない!!」


「シノブ!!」


Dokaaan!!


 膨大なエネルギーを秘めた魔力球が、目の前で激しく膨張し、ついに大爆発を起こした。シノブは、爆風からララーヌさんを守るため、彼女の身体を覆い被さるように身を捧げた。その献身的な行動によって、ララーヌさんには一切の被害が及ばなかった。


「御館様…!すみ…ませ…ん。」


シノブは、光の粒になって消滅してしまった…。


「うぉー!シノブ!!」

「キャー!」


「ララーヌ様!」「カレラ!行け!」


「はいよ!」


「せいや!」


Don!


「ウグッ!なんという力だ…。」


アラムスナビは、カレラの攻撃で少し怯んだ。


「ララーヌ様!」


 敵がひるんだ瞬間、俺は急いでララーヌ様のもとへ駆け寄り、彼女の手を引いてアラムスナビから遠ざかった。


「お父様!」「ララーヌ!」


 何とかララーヌさんを侯爵様の元へ連れ出すことに成功した。


「おい!アラムスナビ!お前の目的は何だ!?」


「キサマ!なぜ我の名を知っている!?ふん、その小娘を知っているか?やがて聖女のジョブを持つことだろう。聖女を生け贄に捧げれば、我よりも更に上位の悪魔を召喚できる。そいつは、その為の餌なんだよ!」


「ふざけるな!そんなことが許されるかよ!」


「当たり前だ!人間と我々では物が違う。一緒にするな!」


「それ!よそ見しなさんなって!」


Ban!


「グワァ!コイツめ!ジルスパーク!」


 アラムスナビは、カレラの攻撃を受けたものの、すばやく姿勢を立て直して、力強い魔法の言葉を唱え始めた。すると、鋭い青い閃光の中に、電気を纏った槍が現れた。その槍は、まるで稲妻のようにカレラに向かって一直線に飛び去った。


Zun!


「ウグッ!しまった…やっちまったぜ!すまない…団長…。」


 カレラは追撃を試みる瞬間、ジルスパークが飛び込んできたため、カウンター攻撃を受けることになった。そして、鋭い雷の槍はカレラの胸の中央部に突き刺さり、彼女を仰天させた。


 カレラも光の粒になって消滅してしまった…。


「クソッ!俺の戦姫が二人も…。やはり、強い。」


 肉弾戦においてはカレラが有利だが、アラムスナビは魔法攻撃に長けており、最終的にはアラムスナビに倒されてしまった。


「強力な魔法を2発も使ってしまった。少し補充するか…。お前とお前。回復させて貰うぞ!ドレイン!」


「うがぁー!」「た、たすけてくれ!」


Juwan!


「ロック!ニール!」


 護衛兵士たちは、謎の魔法によって生気を奪われるかのような様相を呈し、一瞬で皮膚が縮れ上がって干からび、息を引き取ってしまったのだ。


 ララーヌさんは、護衛兵士が絶命する光景を目にして、ショックで気を失ってしまった。今は、傍にいる侯爵様が彼女を見守り、看病している。


(ナビィ。戦姫は、死んだのか?)


(大丈夫!戦姫達は、こちらで消滅しても、しばらくすればまた顕現できるようになるよ。それより、このままじゃあ殺られちゃうよ!団長!あれを使いなよ。)


(あぁ。もうそれしか無いよな。分かった!)


「北条 響が命ずる!戦姫エクサーシャ。前へ!」


―――― to be continued ――――

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