第4話 アプリの実力

「よし、どの種類の薬草もかなりの量が採取できたぞ。でも、大量過ぎて持って帰れない…。じゃあ、ナビィ。後は宜しくね!」


「コラ!団長!私に丸投げして帰ろうとしない!まったくもう…。私が実体ないの知ってるくせに。持って帰れない程取っちゃうからだよ。」「団長、WWGの頃、武器やアイテムはどうしてた?」


「そりゃ、ストレージにポイッて!って、まさか!ナビィさん!?」


「WWGでやれることって、制限はあるけれども、割りと出来ちゃうんだよね。」


「おぉー!それはいい。もし、出来るようになったなら、相当便利になるぞ。」「なら、試してみようか。」


「北条 響が発動する。スキル"ストレージ"!」


Buoon!


「これがストレージ!?ゲームで普通に使うだけだし、見るのは初めてだ。なんか感動…。」


 目の前には、黒い#靄__もや__#の様なものが表れた。渦を巻いている様なシルエットで、イメージとしては、小さなブラックホールの様である。


「ストレージが顕現されたことで、ストレージ用のアプリが出来上がったみたい。ストレージにアイテムをしまう場合は、直接近づければ、吸い込まれて収納されるよ。逆に取り出す時は、アプリを起動して端末でアイテムを選択して出してね。」


「本当にアプリが出来上がってる!インストール済んでるってことでだろ?顕現させるのって、何だか不思議だよな。」


「そうだね。そのあたりの仕組みは、ナビィにも良く分からないんだよね。アプリは、自分でインストールしてから使う場合と、能力で顕現した際に、インストールされている場合があったりするからね。」


 俺は、やっとの思いで手に入れた薬草を大切に扱い、ストレージにしまおうとした。薬草を丁寧に手に取り、ゆっくりとストレージに近づけてみると、その瞬間、薬草はまるで魔法のように手元から吸い込まれ、跡形もなく消え失せてしまった。


「おぉ!実際に収納される際の様子は、凄いな。一瞬で無くなってしまったぞ。」「そう言えば、WWG時代の俺の武器やアイテムは、まだ残ってるの?」


「残っているよ。でも、スマホフィルタのせいで制限されてる。残念だけど、今はまだ取り出せないみたい。」


「スマホマスターのレベルを上げるしかない。そういうことだろ?」


「うん。そうだよ。団長、頑張ってね!」


 俺は全ての薬草を収納し終えた後、スマートフォンでストレージアプリの内容を確認した。ナナリは88本、カズナは96本、そしてフーキは79本であった。すべて整然とフォルダ分けされ、自動計算された本数が表示されているため、非常に便利であった。それらが多いのか、少ないのかは明確ではないが、貢献ポイントが5本以上から付与されることを知っていたため、懸念する必要はなかった。


(アルスガルド王国 冒険者ギルド)


 俺まはGOGOMAPと探索アプリを利用し、魔物を回避しながら王都に帰還した。実際、魔物たちの動向は手に取るように把握することができた。再度感じたが、スマートフォンやアプリは非常に優れていると思う。現在は、冒険者ギルドで依頼達成の報告を行っているところだ。


「ちょっと待って!ヒビキ君。これは、一体何なの!?」


「えっと…言われた通りに薬草の採取を終わらせたんですけど。」


「それは、分かってるわ。ヒビキ君に言いたいことは、2つあるわ。1つは、この異常な薬草の量よ!普通は、せいぜい10本~20本採取できれば充分よ。あなたの場合は、桁違いなのよ。」


「あぁ。そう言うことでしたか。どれくらい取るのが普通なのか分からなくて、取り過ぎましたかね?次からは、もっと少ない量を採取する様にしますね!」


「うん、まあ…乱獲は良くないよね。って、そういうことじゃなくて、どうやったらそんなに沢山の薬草が取れるのよ!」


「え!?別に生息している所に行って、普通に取っただけですよ?」


「はぁ~。ヒビキ君って結構天然だったのね?生息している場所を見つけるのが大変なのよ!」


(あぁ。そういうことか…。俺は探索アプリ使ってるから、どこにあるか簡単にわかるんだよな。流石にこのアプリのことは言えないよな。)


「まあ、それはもういいわ。もう1つよ。その大量に置かれている薬草は、一体どこから出したの!」


「あぁ。これですね。これはストレージから出したんですよ。自由に物が出し入れ出来て便利ですよ。」


「ストレージ!?聞いたことの無い言葉だわ。アイテムボックスの様なものかしら?」


「アイテムボックスですか?ナビィ…どうかな?」


(表現が違うだけで、大体同じみたいよ。)


「表現は違うけど、大体同じみたいです。」


「ナビィちゃんね?そうか、やっぱりね…。ヒビキ君がアイテムボックス持ちとはね。アイテムボックスは、とても希少なのよ。戦えない人でも、持っているだけで、その価値を認められるわ。」


「そうだったんですね。良かった。」


「以上よ。本当に不思議なジョブよね?これから、検品するからしばらく待っていてね。」


―― 20分後 ――


「お待たせ!数え終わったわ。」


「ナナリが88本、カズナが96本、フーキが79本だったわ。本当に凄いわ。こんな持ってくる人は、今までいなかったわよ。」


「何かすみません…。」


「いいのよ。最近は、採取する人も減っているし、薬草は不足気味だったのよ。でも、ヒビキ君のお陰でしばらくは、薬草は必要ないかなぁ。」


「あはは…。」


「貢献ポイントだけど、薬草は5本で1ポイントつくのよ。だから合計で52ポイントって訳ね。GランクからFランクへの昇格条件は、貢献ポイントを25ポイント集めること。ヒビキ君。いきなりFランクへ昇格よ!おめでとう!」


「あっ、ありがとうございます!」


 俺は、なんと依頼デビューにして大量の貢献ポイントを稼いでしまったらしい。正直、スマホマスターが覚醒していなければ到底無理だったと思う。この結果に、改めてこのジョブの凄さを実感したのであった…。


―――― to be continued ――――

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