脳筋野郎たちとの付き合い方

白千ロク

脳筋野郎たちとの付き合い方

 勇者御一行。華麗な――華麗すぎる見た目と活躍によってそんな呼ばれ方をしているが、それはいち冒険者パーティーにすぎない。


 本日登城したのには理由がある。ワイバーンの群れを一掃したという理由が。まあ、自分はそんなに活躍したわけではないが。結界に敵を閉じ込めただけだし。


 案内された部屋で待つこと数分、現在の場所は謁見の間である。周りは儀礼しているが、オレたち冒険者パーティーはといえば、見様見真似の形だけの礼をしている。いやだって、生まれた国が違うからね。


 何度登城していても、こうした雰囲気に慣れることはない。オレは庶民だしな。すごく可愛らしい女の子に転生していても、だ。残りの奴等だって元々の幼なじみなんだけどさ、この世界に生まれ変わって魔法を手に入れてからは脳みそまで筋肉族になってしまった。敵なんて魔法という名の物理で瞬殺だからな。教育的指導なワンパンチで沈めていくんだよ、オレ以外の三人は。恐ろしい。


 オレはそんなに魔法は覚えきれていないんだよ。危ない目にはあいたくないので、ひたすら結界魔法を覚えていたくらいでさー。その間に皆は天才とか魔女だか賢者だかと呼ばれるようになっていたんだよな。なんだよ、この差は。


 オレに突き刺さる視線だけは鋭いが、仲間も鋭い視線――殺気を返すととたんに散っていく。まあね、オレは見た目からして役立たず感が強いからね。なんでコイツが一緒にいるんだという目はずっとあるよ。


 国王陛下がいらっしゃって褒美の話となったが、いち冒険者パーティーには必要ないものとして断って帰ってきた。ワイバーンの素材を王城やギルドに売ってから。


 さて問題はここからだな。


「結婚しよー?」

「しない!」

「いい加減諦めればー?」

「そうそう、諦めてものになりなよー」

「笑いながら言うな!」


 ばーかばーかと女二人にクッションを投げつけると、「ああん? 私達に逆らうとどうなるか解らせてあげるけど?」と両手をわきわきさせた。勢いでやってしまったことに気がついてももう遅い。


 二人に愛でられまくって、最後には親友に頭を撫でられまくっていた。なんでオレだけ性別が変わったのかは謎のままだが、親友との結婚は避けなければならない。オレが隣にいるだけでも迷惑だろうし。


 ――と考えていたことは今は昔。


 オレは押されまくって根負けし、親友と新婚生活をしておりますわ。パーティーはパーティーのままだが。しかしだね、脳みそ筋肉族たちは緊急を要する話以外は真面目に聞いてくれないのはなんでかね? 腹が立つこともあるけれども、幸せだからいいか。……うん、いいことにしないとね、オレの胃が持たないんだあ……。


 だってさあ、誰かのものになるのが嫌だから神様に頼んでオレの性別を変えさせたなんて知ってしまったのなら、重すぎる愛が重すぎでしょうよ? 支えきれませんよ!?


 飽きられないように頑張るしかないだろ!?




(おわり)

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