第12話 菜と再会

僕らのバスは長崎駅に着いた。今日の空は、低かった。異世界から魔物でもすぐに降って来そうに低い。僕の中が、ざわつく。僕は駅でユイと分かれた。長崎支店への挨拶、仕事だ。ユイは「観光楽しみ。じゃ。」と別れた。僕はやっと自由になった。まさか悪い境界線人と一緒に行動するなんて、僕は軽い吐き気を模様した。

後ろから優しい声で「大丈夫ですか?お水どうぞ。」僕は後ろを向かず手を伸ばしてペットボトルを受け取った。道端で吐き気、まるで酔っぱらいのようだ。かっこ悪い。「ありがとうございます。」振り向くと誰もいない。駅前、ひと通りは多い。微かに“黄色の春草野の匂う"間違いなく”菜”だ。僕は恥じることなく、思い切り叫んだ。「菜ーーー。」すれ違う人が僕を見る。背中をトントン。僕は振り向いた。”菜”君がいた。僕は、言葉を発することもなく黙って目の前の”菜”を抱きしめた。「いたい。離して。」僕はうれしさのあまり強く”菜”を抱きしめてしまったようだ。僕は冷静さを取り戻し、膝をおり”菜”の両肩に手をおいた。「菜、僕は、あの日以来、ずっと君に会いたかった。たった一度、それも"48分の菜とのデート”僕はどうしようもなく君にもう一度会いたかった。どんな形でもいいから会いたかった。話したいことがたくさんあるだ。君はランタン祭りに僕にこの長崎に手紙をくれた。あの日から3年の間。僕は待っていたんだ。この日を君に会える日をずっと。君からの手紙には、君が僕を必要としていることが分かった。何か大変なことに君は巻き込まれているのか?菜、菜。僕は君が心配だ。しかし、やっぱり会えた、うれしさがまだ冷めない。菜、僕のこの舞い上がりを止めてくれ。」菜は、僕をまじまじと見つめ。「コッ」と僕のおでこをたたいた。「私は今ここにいるよ。もう消えないし、逃げない。大丈夫。」「そうだな。目の前に君はいる。」菜が「その前に君の名前教えて。私知らないんだ。」「僕の名前はワタル。灘 渡。ナダワタル。」「ワタルね。でも何か変、しっくりこない。ワタル何か隠してない。」京・キョウの名を忘れていた。今が伝えるべき、正しい時だと感じた。「僕の名前は灘 京。ナダ キョウ。これが僕の本当の名前だ。」菜が「キョウね。わかった。でも今はまだワタルでいい。悪い境界線人がたくさんいるから。本当の名前だとワタルは、悪い境界線人に連れていかれるよ。」「菜、同じことをなずなが僕に言った。菜、なずなは君の姉だと言ってたけどほんと?悪い境界線人ではなさそうだったけど。」菜は「なずなは、ほんとよ。姉。なずなは人間が嫌いなの。でもそういいながら人間界にはよく遊びに行ってるみたい。」僕はなずなの友達のみすずについて菜に聞いた。「菜、みすずは知ってる?」「知らない。姉の交友関係は興味が無いんで。」「みすずは、なずなの友達で僕の同僚だよ。」「そうなんだ。」「あと、ユイを知ってる?佐々木ユイ。悪い境界線人。」菜は少し怒った顔で、「知ってる。ワタルと恋人ごっこしてる悪い境界線人でしょ。ワタル、普通は女子と二人どこかに出かけたりしないの。勘違いするでしょう。私も怒っているのよ。」「そういえば、何度か菜の“黄色の春草野の匂い"が時々したけど。なんで姿を現してくれなかったんだ。」「それは悪い境界線人が邪魔をしていたから。佐々木ユイ。彼女が邪魔をしていたの。彼女はワタルを仲間にしようと狙っていたのよ。だから長崎まであなたと一緒でチャンスをねらうために来たのよ。そんなことわからないなんて、ワタルは鈍いの?」僕は菜のいらだちとユイに対する嫉妬を感じた。僕にしてみれば、それだけ菜が僕のことを好きなのかと、ほんと勘違いしてしまう。「菜、君は、ぼくのこと好きかい?」「好きに決まってるでしょ。だから危険を冒して、人間界に来たのよ。危うく人間の肉をたべさせられるところだった。」「えっ、やっぱり食べたのかい。」「ばかじゃない、食べないよ。人間界の食べ物を食べるとスムーズに人間界に行けるってこと。私は誰にも騙されていないし、自分の意志で物事は選んでる。」僕は菜が少し大人に見えた。「ところで、菜、僕の助けが必要なんだろう。大好きな菜のためなら力になるよ。僕はどうしたらいいのかな。」「ありがとう。じゃあ、私と一緒に境界線に来て。悪い境界線人を消滅させと欲しいの。」「えっ?僕が?」「そう、君が、ワタルがね。君にはその力があるでしょう。人間でも境界線人でもない君。ワタルしかできない。」調子のよい僕は軽く「いいよ。」と返事した。次の瞬間。目の前に大きな

電磁波で形をとったドアが現れた。「ワタル行くよ。」菜が手を伸ばした。僕は菜の手をしっかりと握り一緒に時空空間、境界線に飛んだ。そして僕は境界線へ入る直前、僕はもう一度硬く菜の手を握った。”離さない”



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