第6話 デザートデスワーム

4人には、リビングの石床に布を何枚も重ねて敷いただけの簡易な寝床を作ったのでそこで寝てもらった


俺?


鍵付きの自室のワラのベッドで寝たよ


平和ボケしているとは言われていても、流石に初めて会った奴らと同じ部屋で雑魚寝はちょっとな?



翌朝、北の村に行く為に荒野砂漠を渡ると言われたので、餞別に今日の朝も食べたトカゲハンバーグと皮袋に入れた水を沢山渡した


ローブの中に入れておけば、次の村までは持つそうだ


30キロの道をどうするのかと聞いたら、四足歩行になったバーナードが子供達を背に乗せて突っ走るんだと


なるほどな?


出発の時、ベネディクトがこちらへやって来た


「本当に助かった

この借りはいつか必ず返しに来る」


目を伏せて礼を言われた

礼を返すとは、律儀な奴だな


「別に良いよ

それよりなんとかワームとやらにまた襲われないよう気をつけてな」


「ああ」


無表情で無口だったので怖そうな奴だと最初は思ったが、こいつも案外良い奴だったな


しゃーねぇ

チェーンをぶっ壊した事は目を瞑ってやろう


手をローブから出してヒラヒラと振る


マシュとイーサンも、背中にしがみつきながら手を振ってくる


…お前ら落ちんなよ?



ベネディクトが先に走り出し、その後をバーナードが追いかけて行った



ちょ!?


グリズリーとダークエルフ、走るのめちゃくちゃ早いな!?



そして4人は、あっという間に見えなくなったのだった





昨日の菜園の続きでもするかー


ホーリーバジルが手に入りにくいと知ったので、早めに沢山栽培する事にした


収穫まで何ヶ月もかかったら困るからな


アロエやトウガラシの苗などもついでに植えて、木で作ったジョーロで水を撒いておく


「しっかり育てよー」


後はそうだな…


ログハウスの周りを見る


雨が降ったら足元がぐちゃぐちゃになりそうだし、いつか煉瓦か滑らないタイルを家の周りに敷きたいなぁ


菜園周りはとりあえず木材と丸石で、ちょちょっと整えておいた


しっかし、砂漠の荒野にジャングルにログハウスの平屋…



うん、ミスマッチ!



…気にしたら負けだな



家に戻り、気になっていた左奥の部屋に入る


実はこの部屋、壁も床も洞窟の様な石で覆われていた


昨日の夜、ベッドに横になった時に建築その他にオプションなる物があることを知った



それがこの部屋に作れる《地下》だ



地下室ではなく地下なのが気になるが、50SPを消費して試しに作ってみた


すると部屋の真ん中に人が2人ほど通れるくらいの四角い穴がポッカリと空き、木製の梯子が設置される

魔法でライトを灯しながら、梯子を伝い下に降りていく


降りた先は、確かに部屋ではなかった


穴と同じくらいの狭い空間

梯子から降りて振り向いた背後は直ぐに土の壁があり、色々な色をした土が幾層も重なり合っているように見えた



…何処かで見たことがあるな?



「あ、土壌の断面か」


俺が知っている物より土の色の種類が多いが、まさに土壌の断面だろう

赤茶色や灰色、白くてキラキラ光り輝いている層もあった


「これ、まさか塩か…?」


鑑定眼を使用すると、やはり岩塩だった



岩塩……塩きた!!



とりあえず数mほどの範囲の岩塩を収納したら、地下の表記が地下室に変更された


更に掘り進めると、岩塩だけでなく粘土や珪砂なども採れた


これなら簡単な煉瓦やガラスなどが作れそうだ




「ん?

なんか耳、少し尖ってる…?」


淡いピンク色をした岩塩を洗浄し、乾燥している最中

キッチンにちょっとお洒落として飾って置こうと、ガラス瓶を作ったら自分の顔が映っていた


記憶はないが、なんだか見覚えのある顔


「ガキの頃の俺だな…

それよりちょっと痩せてるか?」


意志の強そうな瞳

左目の下には泣きボクロ

色素の薄い唇

少し日に焼けた小麦色の肌


うん、めちゃくちゃ生意気そうな面だな


実際、落ち着きが無く

誰かと一緒でよくやんちゃをしていた気がする



…あれ?


誰か、って誰の事だったっけ…



首を傾げるが思い出せない


ま、記憶がないからしょうがないか



昔と、今ガラスに写る子どもの自分と違うところは、言われなければ気づかない程度に耳が少しだけ尖っている事だ


「まぁいっか」


日常生活に問題をきたす訳じゃなし


「それより次は何をしようか…」


やりたい事や足りない物が沢山あるが、如何せん素材が無いのだ


調合や建築その他もだが、気になっているアクセサリーの素材が無い


というより、何がいるのか分からない


アクセサリーなどに必要な素材名が書かれていないのである


「こういうとこ、ちょっと不親切なんだよなー」


だが、それが何かを探すのも少しワクワクする


アクセサリーというくらいだから鉱石だろうか?


鉱石といえば岩や石に微力に含まれている事もあるんだったか


でも地下では鉱石は取れなかったし…


「あ

砂漠にデカい岩とかあったな」


日が落ちる前に見に行くか


鑑定眼を使えばすぐ分かるだろうし




ドゴーーーン!!!



えー、こちら砂漠とジャングルの境目辺りまで来ている名無しです


今、物凄く気持ち悪いウニョウニョ生物を発見致しました


あれは世にいうUMAではないでしょうか?


------

デザートデスワーム(食用)

Dランクの魔物


瘴気症(小)

------


あれ、イーサンに怪我負わせたって言ってたやつじゃね?


デスとか名前からしてやべぇ…


「てか、食べれんのか」


体長1.5mくらいの、でっかい口にギザギザの歯がびっしり生えたミミズが食用って



食欲失せる見た目なんだが?



しかも土から急に飛び出した勢いで、そこらの枯れた木とか石を粉々にしてるぞ


「Dランクの魔物…ってことは

あれ倒したらLv上げ出来るってことか?」


バーナード達と夜に焚き火を囲んで雑談している時に教えてもらった

動物と違い、魔物を一定数倒せば強くなれるらしい


ジャングルの中は安地なので、俺はここから攻撃する事にした


セコい?


ずる賢いと言って欲しいな!



指先で狙って…



ザシュッ



うげぇぇぇぇぇぇっ!


いつもより威力を上げたスラッシュにより、綺麗に頭が吹っ飛んだ


それは良かったのだが、頭をなくした胴体がビッタンビッタン暴れまくっている


アレが食べれるって?


ムリムリ、食欲0になったわ


そして、息絶えてピクリとも動かなくなってから



ピロンッ



と音が聞こえた


「おーっ

一気にLv4になった!」


こんなに簡単に上がる物なのか


ステータスも1Lv毎にMPSPは20ずつ上がってる

他は5ずつ


見た目も倒れ方も気持ち悪いが、何かの役に立つかもしれないのでとりあえず収納しておく


このジャングルから出て町とかも行ってみたいし、コイツらを倒してLv上げするか


強くならないと何かあった時に後悔しそうだしな?


グルっと辺りを見渡す


「ん…?

何やってんだ、アレ?」


どこにでも居るのか、ジャングルの近くでもワームが地面から跳ねていた


さっきの奴と違うのは、黒いマリモ?か何かを追いかけてこちらに向かって来ている事だ


「うぉっ、こっち来んな!」



ザシュッ



先程の奴より小さいワームも頭が吹っ飛んで息絶える


「何を追いかけてたんだ…?」


近づいてみると、倒れたワームの近くに黒いマリモみたいなのがいた


それは俺から逃げる様にジャングルに向かってヨタヨタと飛んで、見えない結界に当たってペチャっと地面に落ちた


見るからに痛そうだ


「なんだ、コイツら?」


地面には大人の親指サイズくらいの黒くて小さなコウモリが2匹いた


黒いと言っても、首周りは白いたてがみがあり、耳と鼻が淡い黄色だ


地面に落ちて固まる片割れにくっ付いて、もう1匹が必死にちぃちぃと小さな声で鳴いて威嚇してくる


いや、そんな震えながら威嚇されても全然怖くないのだが?


めっちゃピルピルしてるし


左手をブラブラ振って囮にし、威嚇してる方がそっちを向いた隙に素早く右手で首根っこを引っ付かんだ

あとは左手で、呆気に取られて固まっている方も引っ掴む


捕まった2匹は怖いのか、手の中ですっごいピルピルしている


「あー

痩せてて肉あんまり付いてないな

唐揚げ…姿揚げにしたら食べられるかな

…げっ」


そう言うと、2匹は俺の手の上で失禁したのだった


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