きんにくおばけとトレーニング

松井みのり

きんにくおばけの悩み

 むかしむかしよりも、もっとずっと今にちかいお話。


 草木もねむる、丑三つ時。

 おばけたちがたくさんいる世界のおばけランドに、「きんにくおばけ」というおばけがいました。


 きんにくおばけは「名は体を表す」という言葉どおり、きんにくがすごいおばけです。

 「上腕二頭筋ナイス!チョモランマ!」「背中ユーラシア大陸!」など、たくさんのおばけたちから、そのきんにくをほめられていました。


 だけど、きんにくおばけには悩みがありました。

 にんげんを怖がらせることができないのです。


 どんな心霊スポットに出てきても、にんげんからも「上腕二頭筋ナイス!チョモランマ!」「背中ユーラシア大陸!」と声をかけられてしまいます。にんげんからも怖がられることなく、ほめられるだけです。

 これではおばけとして情けないのです。


 しかし、きんにくおばけは自分の見た目を変えることができませんでした。おばけランドの大王により、そういう決まりになっていたからです。


 なので、きんにくおばけはムキムキなきんにくをふるわせ、泣いているばかりの毎日でした。


 そんなおばけランドには、スレンダーマンというおばけもいました。


 スレンダーマンは、身長や腕、脚など全てのパーツがとてもとても細長いというおばけです。スレンダーマンはたくさんの場所で、その見た目でにんげんを怖がらせてきました。


 しかし、スレンダーマンにも悩みがありました。それは怖がらせようと思っていないときでも、怖がられてしまうことでした。

 たとえば、にんげんの世界でカップラーメンを食べたいなと思ってコンビニへ行っても、店員は怖がって逃げてしまいます。

 これはこれで、おばけとしてさみしい気持ちになりました。


 ある日、そんな二人がエムドナルドとよばれているハンバーガーショップで待ち合わせしました。(関西ではエムド、関東ではエムク、アメリカではエムドナゥドと呼ばれています)


 期間限定の「春のテリヤキバーガーセット」を頼んだ2人は、ならんでポテトをポリポリ食べながら、黄昏ていました。


 そんな2人が動画サイトで、カップルチャンネルを立ち上げるのは、また別のお話。(きんにくおばけの性別は男性をイメージされるかたもいるかと思いますが、おばけに性別はありません。スレンダーマンも"マン"とかいていますが、愛称です。これは、そういった"配慮"ではなく、そういう世界だと思ってください)


 めでたしめでたし。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

きんにくおばけとトレーニング 松井みのり @mnr_matsui

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説