店長、頑張る

みどり

棚卸しは大変です

少女達は楽しそうに森の中を歩く。


彼女達のお目当ては森の本屋だ。巨大な木の洞の中に作られた本屋で、あちこちにハンモックがあり森林浴をしながら読書が楽しめる。


「晴れてる日は森の本屋さんが良いよねー」


「今日はあったかいし、のんびりできると良いね」


微笑んでいた少女達が到着した本屋は、普段見た事のない状態になっていた。


「今日棚卸しでお休みって書いてある!」


「うっそぉ! 棚卸しってこんなふうになんの?」


戸惑っている女子高生二人の元へ、店長が現れた。


「すいません! 今日はお休みなんです! 年に一度の棚卸しでして……あ、いつもご利用ありがとうございます!」


店長は常連二人を覚えており、営業できない事を謝罪した。


「大丈夫です! 海の本屋さん行こっか」


「あ! そちらも棚卸しです!」


「あー……そうか。ご兄弟でしたもんね。じゃあ、どうしよっか……」


「んー……ウチ来る?」


「今から行ってたら遊ぶ時間ないよー……しょーがない、今日は解散しよっか」


「そうだねー……残念」


「もしよろしければテラスだけは解放しておりますのでいかがですか?」


「良いんですか?」


「ええ、常連さん限定ですが開放しております。ただし、閉店時間になってもお声がけしませんのでご注意下さい。うちは、今夜は徹夜なので」


「じゃあ、少しお邪魔しよっか」


少女達の他にも数名の常連がいるテラスで、少女達はのんびり過ごす。見た事のない馴染みの本屋の様子が、少女達の興味を引き立てた。


「すっごい大変そうだよね」


「ホントだね。みんな本をあちこちに移動してる」


「重そう」


「本屋さんは体力勝負だって言うもんねぇ」


「店長さん、筋肉ムキムキだもんね」


「ねー、かっこいいよね」


「分かるー!」


常連の少女達の賛辞が聞こえた店長は、いいところを見せようといつも以上に働いた。おかげで、店員達は徹夜を免れた。


少女達は何も知らずに、幸せな時間を過ごした。

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