露天酒場と腕相撲大会

冨平新

露天酒場と腕相撲大会

 「お嬢様、ダウニー町ですよ!」


 バサッ・・・バサッ・・・

 スチュワートが、街の郊外こうがいに着陸した。

 

 「んしょ。」

 三恵子みえこはスチュワートから降り立ち、地面に足を付けた。



 ボンッ!!


 スチュワートが急に爆発したかと思うと、

白い大きなもふもふ犬になっていた。


 「お嬢様、ダウニーの市街地まで、私はもふもふ犬の姿で参ります。

それから、お着替えも致しましょう。」


 ボンッ!!


 シルクのパジャマを着た三恵子が突如煙に包まれ、

ツインテールのオーバーオールを着た少女になった。


 スチュワートが変幻自在へんげんじざいで、魔法も使えることは知っていたので、

三恵子は驚かなかった。


 「人気の多い市街地に着きましたら、

私は紳士になって護衛ごえいいたします。

さあ、私にまたがってください!・・・タァッ!!」


 三恵子がまたがると、スチュワートは市街地に向かってけ出した。


◇◇◇

 

 夜のダウニー町。

 道の両脇には露天商の長い列。

 しゃべり声、笑い声、時に大きな奇声も聞こえた。


 紳士になったスチュワートと共に歩いていると、

 露天酒場ろてんさかばに大きな人だかりができていた。


 「俺はブロンディに10ゴールド賭けた!」

 「俺はブッチャーに15ゴールドだ!」

 びんビールを片手に、男たちが大声でわめき散らしている。



 酒を飲んでいる男が、三恵子に気づいた。


 そして、ニヤつきながら大声で三恵子に話しかけた。

 「お嬢ちゃん、こんなところで夜遊びかい?

ここは、お前さんの来るところじゃないよ。

うちに帰んな。」


 「これは失礼。この娘は私の妻でして。

私はブロンディに1000ゴールドけてましてね。

試合を最後まで見守らなくてはならないので、

妻同伴でもうしばらくここに居させてもらいます。」


 白い上品なジャケットを着た

長身イケメン紳士のスチュワートが

三恵子の肩を抱き寄せた。


 三恵子はカーっと赤くなった。


◇◇◇

 

 人だかりの視線の先には小さな円卓、

 そこへ、筋肉隆々きんにくりゅうりゅうの2人の男が現れた。

 

 「ブッチャー!いっけえ~!」 

 「ブロンディの腕をへし折ってやれっ!」

 「ブロンディー!カッケーッ!」


 腕相撲大会で争うブッチャーとブロンディは

円卓にスタンバイして、にらみ合っている。

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露天酒場と腕相撲大会 冨平新 @hudairashin

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