地道な努力は報われるのだろうか

鹿嶋 雲丹

第1話 地道な努力は報われるのだろうか

 世の中には、筋肉がつきにくい体質の人間がいる。

 かくいう私がその代表だ。あくまで自称である。

 私の母は、勉強は今ひとつだったようだが、スポーツはできた。得意技は背泳ぎだ。

 私は見事に、そのDNAを引き継がなかったのである。

 では、学生時代の私がいかに筋力がなかったを証明する実話をご紹介しよう。

 それは、小学6年生時のプールの授業。

 クロールの試験だ。

 数人横並びになり、私は一番右端のレーンだった。

 目を開けて泳ぐと目が痛くなるから、目をつぶって泳ごう、きっとなんとかなる!

 私はそう信じ、必死に泳いで壁にぺたりと手をついた。

 顔をあげた途端に耳に入る、大勢の人の笑い声。

 それがなぜなのかを判断するのにしばらく時間がかかったが、それを理解した途端、私はプールの底に沈みたくなった。

 私が手をついたのは、プール左横の壁だったのだ。

 つまり、右から大きくカーブして左端に到着したのである。

「目を開いて、プールの底を見ながら泳ぎなさい」

 先生からはそうアドバイスをもらったが、私はその場から消えてしまいたいほど恥ずかしかった。

 本当に、嫌な思い出ほど忘れられないものである。

 だが、筋肉を補ってあまりあるものを私は持っているのだ。

 それは見栄と意地である。

 それに気づいたのは、高校時代の体力測定時。

 鉄棒を使って行う斜め懸垂中であった。

 ふと気がつけば、やり続けているのは自分一人。

 私は急に恥ずかしくなり、自主的に座りこんだ。

「まだできただろう?」

 という体育教師からの鋭い指摘を、華麗にスルーしたのは言うまでもない。

 なぜ筋力のつきにくい私が、斜め懸垂クラス一位になったのか。

 それは高校生になり、文化部育ちの私がバドミントン部に所属したからだ。

 やはり地道にトレーニングを積み重ねると、つきにくいものでも多少つくものらしい。

 継続は力なり。

 筆力もそうなのか?

 わからないが、とにかく続けている私である。

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地道な努力は報われるのだろうか 鹿嶋 雲丹 @uni888

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