KAC20235 シンクロカップル

麻木香豆

第一話

「づかれだー!」

 除霊師のコウはとある山の登山路の途中まで辿り着くとグターっと倒れ込んだ。


「これでへたばってたら撮影どうすんのよ」

 と登山までの撮影を重い機材を運びながら同じく登っていた同じく除霊師の由貴。彼も酸素を吸ってる。2人とも登山経験ゼロだ。


 2人は心霊動画クリエイターとしても活躍していて今回依頼があったのだ。その場所には小さな個人で作った慰霊碑がある。


「ほんとすいません、こんなところまで……」

 依頼主で登山が趣味の30代の雁坂亜美。そしてコウたちにはみえていた。

 あみの横に彼女よりも少し大きな好青年がいるのだ。


 以来時からもだが、登ってくる際に驚いたことにその青年の霊は全く亜美と同じ動きをしていたのだ。


 体の動きだけでなく喋る時、瞬きする時の動きが全てシンクロ。双子以上、全くのコピーだ。もちろん今も全く同じ動き。


「ここで事故が起きたのです。落石に遭い……私と彼が……」

 亜美の横にいるのはその彼、藤澤天馬だった。


「2人で落石に当たったのに私は気づいたら山道にいたのです。藤澤くんは……即死。私は当初植物状態だったけど……彼の一周忌に目を覚ましたの。そして嘘のように全身麻痺だったのにほら、今この通り、リハビリもせずよ!」

 と確かに一年も植物状態だったものにも思えない動き。となりの藤澤の動きもだ。


「……でも3年登山は怖くてできなかった。だから彼に会いたいと思ってご依頼しました」

「なるほどね。……もう彼はあなたのそばにずっといましたよ?」

「えっ!」

 コウにそう言われ亜美と藤澤は同時に驚く。由貴は始まった! と撮影を始める。


「最初、彼があなたに乗り移ったのでは……と思いましたが……なんか違う。亜美さんと藤澤さんが同時に動く、表情も同じだ」

「……そうなんですか?」

「非常に稀なケースですが……藤澤さんは……亜美さんの筋肉に乗り移ったのです!」

「筋肉?!」


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