第二戦闘配備 蒼き心と桃色の脳内

〜ブルーの場合〜



「えっと……なんで僕は砂漠にいるのぉぉぉぉぉぉぉぉ?!」


 そこは一面の砂、砂、砂……。見渡す限りの砂。公園の砂場どころの規模じゃなくて、ネットやテレビで見た事があるような砂漠。日本にある鳥取砂丘もメじゃないくらいの茶色一色の世界……。

 僕は朝起きたら砂漠にいた——。



 僕は“元”多分戦隊ジャスティスファイブのココロブルーとして闘っていた。


 子供の頃からの憧れだった戦隊ヒーローになれた時は、両親や友達にもちゃんと報告したし、初めて給料が入った時には家族総出でお祝いパーティーしたんだ。

 でも、僕はもう恋い焦がれる程に憧れてた戦隊ヒーローじゃない……。



 僕はジャスティスファイブが解散してから実家に戻って部屋に引き籠もってた。何もやる気が起きなかった。もう、生きているのがイヤになったって言っても可笑しくないと思う。

 子供の頃からの夢が叶ったのに、三年足らずで夢が潰えた僕の気持ち……分かってくれるよね?


 だから日がな一日暗い部屋の中でボーッとしてた。起きたい時に起きて、寝たい時に寝る。ご飯は部屋の前に置かれているから、お腹が空いたら食べる。部屋から出る時はトイレとお風呂の時だけ、誰とも会いたくなんてなかったし、誰とも話したくもなかった。


 実家だから両親は心配してドアの向こうから何か話し掛けているけど、そんな事に反応なんかしなかった。僕は何もしたくなかったんだ。


 そんなヒキニートになってから何ヶ月経っただろう?その日も普通に寝て、普通に起きたハズだったんだ。



「あぁ……ここ、どこだろ?なんで砂漠なの?日本に砂漠なんて無かったハズなのに……鳥取砂丘だって砂漠じゃないでしょ?それに見渡す限り砂しか見えないなんて、鳥取砂丘ですらないよ……僕は、僕の部屋に帰りたい」


 僕は途方に暮れながら砂漠を一人で歩いて行く。目的地も行く宛も無い。砂漠で迷子な僕は、こうなってしまったらもうヒキニートなんて言えないけど、歩く事しか出来ない。

 だから歩き続けていた。




〜ピンクの場合〜



「ちょッ!何ここ何処ここ?お花畑なんですけど?なんかウケる」


 アタシは“元”ピンク。ジャスティスファイブのアタマピンクで唯一の紅一点で女の子ヒーロー。えっ?なんかアタシの日本語可怪しい?ウケるんですけど。


 アタシは別に戦隊ヒーローに憧れてたワケじゃなくって、ただ就職難だったし、ラクして金を稼ぎたかったから戦隊ヒーローになっただけだし。

 だって無駄にへこへこしてペコペコして、労働したって貰える給料少ないんじゃやってられないじゃん?アタシより仕事出来ないクセにアタシより給料貰ってるヤツ見たら頭に来るじゃん?だから戦隊ヒーローって天職だと思ったし。


 敵のザコ怪人を甚振いたぶって背中からサクって張っ倒すと、どかーんって爆発してそれで給料がっぽがっぽなんて良くない?だからアタシは一生戦隊ヒーローでいいかなって思ってたし。


 で、今は就活してるんだけど、次の戦隊ヒーローがなかなか決まらなくて焦ってんのよね。今まで貰った給料なんて、全部オトコにつぎ込んじゃったから全く残ってないし、失業保険とか言うのも貰えなくて、ホントに困ってるし。

 今まで貢いでやったオトコ達は、アタシがヒーロー辞めたって言ったら音信不通になって連絡もつかないしさ……。だからアタシは住む場所も失くなって若い身空でホームレスってヤツ?


 流石にホームレスじゃ、戦隊ヒーローになれないなんて誰も教えてくれなかったし、このままじゃヤバいなって思ってた矢先に……何も起きなかった。だから、神様なんていないって思ったし。

 こんな若くて可愛い女の子がホームレスやってんだからさ、神様がホントにいるなら金の一束や二束くらいさ、くれそうじゃん?



 アタシはホームレスとして公園のベンチに一人座って、誰かがご飯やお金を恵んでくれるのを待ってた。流石に身体目当てで声を掛けてくるヤツもいたけど、アタシは誰にだって股を開く女じゃないし。

 まぁ、イケメンなら考えてあげなくもないけど……。



 そんなホームレス生活も何ヶ月かすると意外とラクだなって思うようになってた。流石に最初はずっと風呂に入れないのはイヤだったけど、暫くしたら仲良くなったイケメンが週二くらいで来るから、ソイツに股開けば良いだけだし。

 ソイツ、早くて下手クソだから全然気持ち良くなれないけど、金くれるし、飯も食べさせてくれるから、まぁまぁ良くね?


 そんなラクでツマラナイ日常を送ってたんだけど、その日は気付いたら一面のお花畑にいたし。



「ホントにウケる。アタシ、どうやってここに来たし?いつものダンボールハウスで寝てたハズなんですけど?マジウケる」


 アタシは仕方無いから歩き回ってた。見たカンジ、いつもの公園とは大分違うし。前はアタマピンクやってたけど、ホームレスやり過ぎてホントにピンクなお花畑に憧れてたみたいでウケるんですけど。

 ってか、こんなお花畑に金をくれるイケメンっているのかな?流石にこんなお花畑でヤるのは、アタシ的には恥ずいんですけど……。でも、イケメンだったらいっか!上手ければ恥ずさなんてすっ飛ばして、サイコーにキマるから、それならお花畑でも股開くしかないねッ!

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