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 頃合いを見計らって必ず蘇小卉に伝えよう。オフィスに戻った後、黄佑恩はずっとこのことを考えていた。

 李亞駿の弱みを握ったぞ。黄佑恩は怒り、興奮していた。怒りの矛先は、あいつがどこでも女漁りをするクズ行為に対してだ。そして、興奮する理由は、蘇小卉にこのことを伝えたら李亞駿から遠ざけることができるからだ。

 彼は生まれて初めて残業して良かったと思った。夜も九時近くになり、宣伝部の社員はもう誰もいなくなった。自分と蘇小卉しかいないことを確認して、椅子を蘇小卉のそばまで移動して今日のことを彼女に告げた。

 蘇小卉の顔には訝しげな表情が浮かんだ。そして、いつもと変わらない表情で「それは何だか……面白そうなゴシップですね」と言った。

「それだけ?」と落ち着いている蘇小卉とは対照的に黄佑恩は少々動揺しながら「腹立たないか?」と聞いた。

「なんで腹立つんですか?」

「それ聞く?あいつは君とAmandaを同じやり方で同時に口説いたんだぞ!こんな風にいろんな女の子を口説いているんだ。ムカつかないか?」

「あの人も友達を作るのが苦手なだけかもしれませんよ」蘇小卉は肩をすくめながら、あまり気にしていない様子だった。

「騙されちゃだめだ!」と黄佑恩は思わず大声になって言った。「あいつは元から何か企んでいる。それでも彼に肩を入れるのか?それは置いといても、仕事中、あいつがいつも仕事中に割って入ってきて色々指摘してくることを、俺はずっと我慢していたんだぞ。あいつから離れて、二度とあいつのそばで楽しそうに話したり笑ったりしないでくれ」

 蘇小卉はポカーンとした表情で、「Rodney、私と同僚のコミュニケーションは仕事の範囲内じゃないですよね?」

「何を言ってるんだ?」、黄佑恩の顔色が青ざめていった。

 蘇小卉は唾を呑み込みながら、もしかして言い過ぎたかもと思って少し後悔した。そして、「何でもないです。わかりました。お先に失礼します」と言った。

 話を終えた彼女はそそくさと荷物をまとめ、オフィスから去っていった。

 黄佑恩は広いオフィスがこんなにもガランとして、静かだったんだなと思わずそう感じた。


「このレイアウトはちょっと変だよ。メインのロゴをもっと下にして……もうこの三角形は使わないでくれ。好んで使っているみたいだけど、うちの会社のデザインとしては合わないんだ」

 翌日、黄佑恩は李亞駿が蘇小卉の席に近づくと、先に蘇小卉の傍に行き、画面上の設計図について指摘した。李亞駿は二人のやり取りの様子を見ていたが、すぐに踵を返して、外にあるコールセンターへ向かって行った。

 しばらく経ってから、謝旻娜は研究開発部門が必要なものをグループ内に落とし込んだ。「RDが技術を紹介する動画を作ってほしいと依頼した。これは外部で講演するために使うの……研究開発部長からぜひお願いしたいと言われ、うちの部が協力した件は必ず上に報告するということ。@Rodney、対応できる?」

「わかりました。部長、大丈夫です!」黄佑恩は感嘆符とOKの絵文字を入れて返信した。

「小卉、この動画は任せるよ」それから黄佑恩は向きを変えてから蘇小卉に言った「あとで動画の素材を送る」

「Rodney、私はまだ新商品のWebサイトデザインと忘年会の小道具のデザインが残っています。この動画はすぐに対処できません」

「とりあえず時間のスケジューリングしてみてくれ」

 その日の夜、黄佑恩は大学時代の同級生と飲み会があったから、定時に帰る準備をした。食事中も仕事の進捗度が心配だったから、蘇小卉へ頻繁にLINEでメッセージを送った。

『動画について困ったことはあるか?忘年会の小道具はもう完成した?上がる前に進捗状況を報告してくれ……』

 帰宅後、またメッセージを送った。

『明日は朝一で俺が小道具のデザインを確認した後、すぐに発注かけてくれ。じゃないと間に合わないぞ』

 ベッドに横たわる前、蘇小卉からメッセージが届いた。

『小道具のデザインは完成しました。動画の進捗度は現在60%です。お先に失礼します』

 絵文字もなく必要な情報以外何もない。まったくもって事務的な口調だった。

 急にむなしい気持ちに襲われた。黄佑恩がベッドに倒れる際、無性に胸が苦しくなった。


 次の日の朝、蘇小卉は自ら黄佑恩をランチに誘ってきた。

「Rodney、少しお話があります」

 午前中は蘇小卉が言いたいことが何かが気になって仕事がおぼつかなかった。

 昼になってある韓国料理店に着いた後、蘇小卉は深呼吸をして、すぐに本題に入った。「Rodney、私は最初、あなたが本当に素晴らしい上司だと思いました」

「最初?どういうことだ?」黄佑恩は驚いた。

「Rodneyは私が早く職場に慣れるように、この会社の文化、例えば上司や部下の情報をいち早く教えてくれました。ゴシップもありましたけど。仕事で困ったことがあったら、嫌な顔をせずに教えてくれました。Rodneyとお話もとても楽しかったです。でも……」

「でも?」

「でも、その後、自分が嫌っている部長と同じことをし始めていることに気が付きませんでした?」

「なんだって?」黄佑恩は彼女がまさかストレートに自分に対してこんなことを言ってくるとは思わなかった。しばらくの間うろたえていた。

「ごめんなさい。言い方がストレートでしたかも。だけど、私には伝える責任があると思います──少なくとも内輪で愚痴をこぼすよりはマシです」蘇小卉はまるで戦闘機から爆撃を受ける覚悟ができたような顔をして、目を閉じた。

 黄佑恩は黙れと言いたかった。この話の続きを聞く勇気はなかった。だが、自分の口がまるで何かに操られたかのようにこう言った。「教えてくれ。俺は何を、部長と同じことをし始めていると言うんだ」

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