【KAC20234】あの日の夜と、今日の夜

月那

あの日の夜と今日の夜


「今日、何時から流星群見れるんだっけ?」

「3時過ぎだよ。ほら、だから急いでよ」

「分かってるって」


 コンビニの前を通りかかると、この時間にしては割と大きめの声でそう話しながら、お店で買い込んだお菓子や飲み物を持って出て来たカップルがいる


 私はさっき自販機で買った缶のホットコーヒーを飲みながら、なんとなくその光景を見ていた



『 京介!早く!』

『詩織…分かってるって』

『ほら!あと30分しかないじゃん!』

『はいはい』

『もう!!はいは一回!京介が寝過ごすから悪いんだよ!』


 3年前のあの日、私達もあの二人のように、流星群を見に行くため、家で温かい飲み物を準備して、防寒もバッチリにして、よく見えるって言われてた山に出かける予定だった。

 でも彼がアラームかけ忘れて寝過ごして…



「もう!寝過ごすからだよ」

「だって、起きれると思ったんだよ」



 ふふ。同じようなやり取りしてる




 そのまま二人は、ワゴンタイプの軽自動車に乗り込んで行ってしまう



 たぶん後部座席には望遠鏡とか、テントとかも載せてるのかな。

 二人で見れるといいわね…



 そこから私は、この辺りではまだ見晴らしも良くて、あまり灯りも届かない、堤防の方へ向かった



(ここでいいかな)


 適当な所に腰を下ろして、もう冷たくなった缶コーヒーを一口飲む


 ここからでも、少しは見えるかな



 あの日、結局私達は流星群を見ることは出来なかった。

 あれから京介が二度寝して、たぶん私もそれにつられて、コタツで二人で寝ちゃったんだ



「あ、ほら、今流れたよ」


 一筋の流れ星を見つけた私は、誰に言うでもなく、そう言っていた


 さっきの二人みたいに、私の隣には、もう京介はいない。彼は半年前に遠い所に、それこそ、あの星のどこかに行っちゃったのかもしれない


 病に侵された彼は、最期に「あの日、寝ちゃってゴメンな」って、力無く笑ってた



 あなたもあの中にいるの?

 それとも、どこかで見てるの?



 流れ星に願い事すると叶うって、本当?



 ここだと少ししか見えなかったかもしれないけど、明け方になるまで私はぼんやりと、数分おきに流れる流れ星を眺めていた







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【KAC20234】あの日の夜と、今日の夜 月那 @tsukina-fs

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ