第25話 悪夢

 怖い夢を見た。何かに追いかけられる。必死に逃げる。


 追いつかれ、鋭い爪に鷲づかみにされる。刃物のような尖った牙が、体を切り裂く。


 恐怖する。悲鳴と絶望・・・・・


 そしていつものベットの上で、汗ぐっしょりで目を覚ます。


 心が怯え震える。ただの夢であったのに、まるで現実のことだったように。


 ほとんどのひとは、頭を振っていやな夢を振り払って、また再び眠りにつく。


 無理やり恐怖を忘れて・・・・・

 ただの夢だったから・・・・・


 でも本当に、ただの夢なのだろうか?


 握られた手首には傷痕は無いか?

 切り裂かれた背中に切傷は無いのか?


 体は眠っているが意識は起きている。

 夢はREM睡眠時に記憶するという。


 例えば催眠状態の人に指で触れる。これは火箸なんだと言えば、催眠状態の人に火傷の痕が付くという。


 その逆はどうなのだろうか・・・・・


 肩に食い込む鋭い爪あと。尖った牙で切り裂かれた体。


 強い自己暗示、そして強い自己催眠で、夢だったと信じることにより、一瞬にして

傷が治癒してしまうことはないのか。


 すべての傷が、まるで何も無かったかのように・・・・・


 そう、ただの夢でしかないはずだから。


 何が現実で、何が夢幻なのか。本当の真実を知っているのは、恐怖した心だけかもしれない。


 もし覚めない夢であったなら・・・・・

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