第24話 DVD

 「見るとヤバいぜ!」

 「必ず出るんだって!」

 「見たら、お終いだってさ!」


 噂のDVDがある。特に怖い映像が流れる訳ではなく、ただ暗い画面が流れるだけのDVDらしい。


 しかし見ると出るの噂がネットで、あっという間に拡がった。


 見た者は突然、会社にも学校にも来なくなる。いや見た者本人がいなくなってしまうという、怖ろしい噂が拡がっている。


 もちろんそんな事が起こるはずはない。 ネットで無責任に拡散する、あまり信用できない噂話だろうとは思うが・・・・・


 残業で遅くに帰宅、マンションの集合ポストを開けたら封筒が入っていた。宛名もなく、差出人もない。いつもポストに入れられる訳のわからない広告だろう。


 捨ててしまおうと思ったけど、近隣マンションでゴミ箱から出火騒ぎが起きてから、うちのマンションの一階にはゴミ箱が設置されてない。


 『しょうがねぇなあ、家で捨てるか』


 持って帰ってゴミ箱に放り込んだ。


 シャワーを浴びてテレビを見ているうちに、時計は既に1時近くを刻んでいた。


 明日も朝から急ぎの仕事があるから、もう寝ようかと思ったが、先程の封筒が、ふと気になった。もし万が一大事な物が入っていたら・・・・・


 ゴミ箱の中から先ほどの封筒を取出し、お気に入りのブルーのベッドで開ける。


 何かわからないが嫌な予感がした。


 もしかしたら・・・・・

 たぶんアレかな?そうたぶんアレだ!


 やはり、そうだった。


 封筒の中には安っぽい、裸のDVDがのぞいている。


 送りつけられた者は、DVDを見ずに不幸の手紙みたいに、速やかに誰かに転送しなければならないってネットに出ていた。


 DVDなんか絶対に見ない。

 明日どっかで捨てよう。

 封筒に戻してテーブルに置く。


 照明を落として横になると、疲れのせいか3分ほどたった頃には深い眠りに入っていた。


 寝静まった真っ暗な部屋。突然DVDプレーヤーのスイッチのランプが点いた。


 何も入っていないはずのプレーヤーが静かに動き出している。


 画面がぼんやり写る。

 暗い画面に影のようなものが蠢く。


 影が暗闇のなかを進んでいく。

 ドアの前にたどり着く。


 どこかで見たドア、

 家のマンションのドアに似ている。


 画面の中でドアが音もなく開いた。

 部屋の中に入る。


 暗いが寝室のようだ。

 ブルーのベッドが写っている。


 突然DVDプレーヤーの電源が落ちて、画面も寝室もブルーのベッドも、全て重い闇に融けた。


 耳元で・・・・・

 小さな声で・・・・・


 名前を呼ばれた気がした・・・・・

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