第19話 ひとりだけの部屋

 見えない何かが現れるとき、必ず空間が急激に冷え込む。冷気か霊気か霊危かもしれない。


 ひとりだけの部屋は寂しい。寂しい心の虚ろが、見えないものの道となる。虚ろの洞から妖しきものたちが、現世を覗きうかがう。


 現れてはいけないものが現れ、見えるはずがないものが、瞳にそして心に映る。


 蛍光灯は蒼く点滅し、テレビにノイズがはしる。聞き慣れた音楽から、歌ではない何かの声がささやく。


 聞いたことがない着信音が響き、取り上げた受話器から、声でない声が耳を凍らせる。


 室温が急激に下がり息が凍る。テーブルのカップが音を立てる。家具がガタガタと震える。


 人ではないものの、血色の目線を肌が感じる。背中が冷たく凍え、見えない重さが肩にのしかかる。


 部屋にあるすべての存在が、異なる空間に溶けこみ、音もなく存在さえなく、ただ深い闇がおいでと誘う。


 ひとりだけの部屋、もうもとの世界にはもどれない・・・・・

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