第13話 開かずの踏切

 かって私が住んでいた近くに、『開かずの踏切』と呼ばれる有名な踏切があった。


 踏切が開かないのかというと、ちゃんと閉まるしちゃんと開く。


 寂れた林道の中にある。周りには何も無い。踏切の前後数百メートルは人家さえ無い。古ぼけた街路灯のみが、踏切を怪しく照らしている。


 踏切が開かずと呼ばれる理由は別にある。


 24時を過ぎると電車が来なくても、突然警鐘が鳴り開かなくなる。ただしたった一人きりで、踏切を通る場合のみである。


 24時を過ぎて一人きりで踏切を通るものなどいない。


 警鐘が鳴り響く線路の上に、現れるものがあるといわれている。点滅する信号機の灯かりに、あるはずの無いものが目に映る。


 もうすでに何人も見ている。見たものは二度と踏切を通らない。遠く回り道をして帰る。どんなに時間がかかっても・・・・・


 冬の風が我が物顔に吹き始めたころ、早めの忘年会を終えて帰路に着く。


 一人きりで踏切を通ることになった。もちろん24時はとうに回っていた。あの噂が頭をかすめる。


 突然警鐘が鳴り始めた。信号機がゆっくりと点滅する。電車の気配などないままに・・・・・


 閉まったままの踏切の先、風が生臭く香った。


 見つめている線路の上でじっと・・・・・

 血にまみれた、首だけの女性の血色の瞳が・・・・・

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