第15話 未来の英雄


特段、スピードが速いというわけじゃない。

だが、その太刀筋はとても繊細で強い。




何度も、何度も試験場に木刀同士が激しくぶつかり合う音が響く。



「流石、“未来の英雄”だけあるな」



セイバーが生まれて、様々な才能を開花させた時から家族や、地域住民からは“未来の英雄”

と言われ続けてきた。



「僕は英雄にはまだ全然届きませんよ、!」



今度は力を込めて、アッカードの攻撃を弾き返す。



「ふっ!!」


少しよろけた瞬間を見逃さずに、叩き込んでいく。



「僕より!もっと強く優しい英雄が生まれます!だから、僕はその芽を摘みたくないんです!!」



「何を根拠にそんなことを…」


「わかってるんです、英雄に憧れたからこそ、その遠さが分かる。ベッドロックさんは確かに歴代勇者と違って英雄と呼ばれるには早かったかもしれません。けれど信念を持って国を救った」



「お前には信念がないのか?」



「信念はあります。けれど僕にはあのような活躍はできない。」



「……まぁいい。それより時間を削りすぎじゃあないか?」



「僕はあなたの本気を討ち取りたいです。全力で闘いましょう。」



「怪我しても知らないからな、お前が負けても俺はお前を落とす。」



「はい!!」



何やら長い話をした後、アッカードは微笑んだ。



バァン!!



速い…!さっきまでのスティーリアとかの強さと比にならないほど…アッカードが本気を出したのか?

この試験では魔法は使えない。

純粋な剣術を推し量るためだ。もし本当にアッカードが本気を出したとしたら、今のセイバーでも怪しい…



「ぐっ…!まだ!!」

 


両者負けず劣らずの戦いを繰り広げる。

だが、決着はすぐについた。



「奥義・雲耀牙パンクラチオン



セイバーの奥義!この時すでに習得していたのか!!

自分の身体能力を魔法なしで底上げする技。

小細工一切なしで、正面からぶつかっていく技で、速さ、威力の全てがワルデザの人族ヒューマンの中でトップクラスになる。

それはまだ大人になってからのセイバーの話だが、10年後の雲耀牙は相手がたとえ受けたとしても衝撃で周りの地面が吹き飛ぶほどだった。そして受けた者も体内に衝撃が伝わるレベルだ。


ドォッッッッ!



「ッ?!」


アッカードの木刀が砕け、セイバーが首元にトンッと当てる


「木刀じゃなかったら防げたかもしれませんね。またりましょう」



「いや、真剣でも恐らく死んでいた。油断はしていなかった。お前の勝ちだ。」



スティーリアより1分近く早い決着だった。

その後アッカードは新しい木刀を持ってきて試験を再開する。



「57番、レオン。来い」


俺も名前覚えられていたのか、魔術試験は上々の滑り出しってところか。

さて、、





アッカードってどうやって倒せばいいの!?!?

いや名前は知ってるし、強いことはわかるんだけどゲーム内で戦ってはないんだよ!!



「なんだ?来ないのか」


「い、いえ何でもありません…」


とりあえずセイバーみたいに思いっきり振ってみるか。防御力もここの生徒よりは倍くらい高いだろうし、



ブォン!ドッッ!



「なに?!」ピキピキッ


アッカードの剣に亀裂が入る。


「え…大丈夫ですか…?新しい剣を用意した方が」



「…相手に情けを掛けるな。今の斬撃を受けなければいい話だ」







「あれは、僕の雲耀牙…?!どこにも流通していない僕だけの技のはず…まさか、」


「見よう見まねでやってみたとか?」


「そうか、、そうだったのか!!彼が…!」


「ん?どうしたの」


「いやぁ、今日は良い日だ…実に素晴らしい日…!」


スティーリアはこの時、セイバーにはあまり話しかけないでおこうと思った。






今の結構効いたっぽいからもう一回やってみるか



ブォン!!!


チリッ



避けた…!凄い反射神経と動体視力だな。

それなら、1番端まで詰めてやる



ブォン!ブォン!



「もう見切ったぞ。それだけしか使えないのか。」


端には行くまいとうまく避けていく。



時間が少ない、1撃を喰らわせれば良いんだったら避けた瞬間、絶対避けられない攻撃をするしかないか。



ブォン!


「ここだ!!」


完全に胴体に入ったと思った、、だが、それはアッカードには読まれていた。


まずい!体勢が安定していない、このままだと……


「終わりだな」


ガッッ


「セーフ…」


「…は?」


隙をついたアッカードの攻撃、

レオンは体を捻りながらギリギリで受けたのだ。


そしてポカンとしたアッカードに最後の1撃が入る


ドッッ


「ぐぁっ、、」


よし!なんとか1撃当てられた!

でも最後アッカードがぼーっとしてたような?まぁ勝ちは勝ちだしな!



「はぁ…はぁ…58番来い」


アッカードは内心驚愕していた。

セイバーの時からかなり気を引き締めて挑んだ筈なのに、隙をついて絶対に防御できない体勢だったのにも関わらず簡単に止めたのだ。






奥に座っているスティーリアとセイバーがいるところに腰を下ろして休む。

すると、セイバーが立ち上がってこちらを見て、


「お疲れ様でした、英雄様!!未来の英雄様の戦闘をこの目で見れるなんて今日は私めにとって忘れられない日となることでしょう!」


え?こいつこんなキャラだっけ?あと英雄様…?


「ど、どうも?」


「まさか未来の英雄様にこんなとこに会えるとは…」


「その、未来の英雄ってなに?」


あと一人称なんで私になってるんだ?


「勇者を超えて魔王を倒す逸材に付けられる名前です!前までは私がそう呼ばれていましたが、あなた様が相応しいと私は思いました」


ヘルムとフレイアと同じ目をしてるな…俺また何かしたの??


「スティーリアさん、俺が戦ってる間になにがあったの?」


「知らない、急におかしくなった。」


よし、精神科に行かせよう。恐らく公爵家は色々ストレスが溜まるんだ。


「どうぞ!タオルです!」


「あ、ありがとう。そんな畏まらないで良いからね?もしかしたらこれから数年間一緒かもしれないから。」


「なんと優しい方なのでしょうか!お気持ちだけで十分ですので私のことは気にせずに!」


イケメンが台無しだぞ…?



この後セイバーが俺の横でずっと未来の英雄…?の話をしてきた。セイバーは自分の力がこれ以上伸びないことを察知して自分は英雄と呼ばれるに値しないと思ったらしい。

それほど子供の頃から英雄は憧れであり、そんな簡単になれるものではないと思ったのだろう。










こうしてスティーリア、セイバー、俺以外は全員魔術試験と剣術で落ちて、学力試験も3人無事終了した。あとは全受験者のうち上位20%が合格するということになっている。















–1週間後、宿屋–



「ご、ご主人様。お手紙が届いています」


ここ数週間でやっと言語がカタコトじゃなくなったユドル。頼んでないのにご主人様呼びになっているのはヘルムの仕業だろう。

教育係はヘルムに任せていたから文句は言えないしな…


「ありがとな、ん?…合格通知!!」


「なんと!まだ1週間しか経っていないのに早かったですね。レオン様ならきっと受かっていますでしょうが、少し緊張します…」


ヘルムは少し心配がっている、自分的にも手応えはあった方だから平気だとは思うが。


糊がついた封筒を開けて中身を見る



「…!合格です!!レオン様ぁぁぁ!!」


「ぐぇっ!」


「す、すいません!?つい興奮しちゃって…」


「ごほっごほっ、あぁありがとな。」




「?!レオン様首席って書いてありますよ!!」




「は?そんなわけ…だってセイバーが…っえぇぇぇぇぇぇ!!??」










–––––––––––––––––––

モブ、首席になる。



次回からは学校生活を送るレオンとヘルムの様子をお送りします。

面白い!!と思ったらコメントしてもらえると嬉しいです。

⭐︎、♡、ブックマークつけていただけると励みになります!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

(仮)ステ振り育成ゲームに転生したモブ、異種族を従えて裏ボスと化す。〜どうやらストーリー改変の原因は俺らしい〜 紋皇 一兎 @rin_314_yak

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ