第46話 そしてそれは起こった


話中に聞いた事のあるワードが出て来ますが、現実の組織、団体とは一切関係ありません。また一部分詳細に書かないが故に説明不足を感じる方もいると思いますが、ご了承願います。

宜しくお願いします。


―――――


 絵里と真理愛以外からも声を掛けられるようになった。昼食も今まで絵里と真理愛だけだったが、俺に声を掛けた三人も一緒にお昼を食べる様だ。


 彼女達曰く、クラスメイトだから当然だという理屈だ。困ったのは勝手に俺の弁当を作って来た子がいて、食べてくれと言われた。


 流石に要らないとはいえず、その時ばかりは食べるしかないと思って食べたら、次の日から他の二人も作って来るようになってしまった。


 それを見た絵里と真理愛も作る様になって、流石に俺も困って仕方なく、もうお弁当は作って来ても食べないとはっきり言ったら、全員悲しそうな顔をして自分のお弁当を引き下げた。

 だけど、それ以来お昼は六人で食べる様になった。


 

 そんな状況でも平穏な?高校生活は続いて、七月に入り一学期末試験も終わり、下条先生に言われ模試も受けた。


 そして次の金曜日、真理愛と一緒に帰る事になった。

「嬉しいな。悠のマンションでこうして居れるの。本当に久しぶりだね」

「ああ、俺も嬉しいよ」




 ふふっ、嬉しい。こうして悠の腕の中にいると本当に幸せを感じる。ずっとこうして居たい。


 俺の隣で真理愛が目を閉じている。彼女のこれに対する欲求は激しい。最初の頃とは全く違う。でもこのままでいる事が出来るなら、これでいい。三学期が終われば渡米する。入学は九月だが、色々と準備が必要だし、環境の慣れもいる。


 あっ、目を開けた。

「悠、嬉しい。何度も行っちゃった。もっとして」

「どうしたんだ真理愛。こんな事こんなに好きじゃなかっただろう」

「分からない。悠に抱かれていると夢の中にいる見たいで。だからねっ。もう一度」


もう一度してあげた。何か狂ったように真理愛の体が反応する。どうしたんだろう。


「真理愛、もう午後六時だ。送るよ」

「でもう」

「また出来るだろう」

「分かった。今度の日曜会えるよね」

「ああ、午後からなら良いよ」




 私は、真理愛が坂口悠の所に行くという事を聞いていた。彼のマンションは既に調べがついている。午後五時位から待っているが中々出てこない。親としては心配だが仕方ない。

 あっ、出て来た。娘と一緒だ。



 二十メートル前を歩いている。周りに人はいない。S$W三十八口径二インチバレル。警察官の通常装備だ。だがこれは神門組から手に入れた物。ライフルマークはバレていない。

 私は、二人の後ろから走って近づいた。後五メートル。この距離なら外す事はない。銃を腰のホルスターから出して撃つそれだけだ。


 構えて引き金を引いた瞬間と同時に、


 ドカッ。


 パーン。


 ぐわぁ。


 横から突き飛ばされた。誰だ?あいつに当たったか。倒れた体を起こして俺にぶつかって来た男に拳銃を向けつつ、坂口を見ると


 なんて事だ!娘が倒れてあいつが生きている。呆然としている俺の手から銃が振り落とされ、地面に体を叩きつけられた。


「坂口さん、直ぐに救急車」




 俺、坂口悠。真理愛をなだめて何とか午後六時過ぎにマンションを出た。二人で手を繋いで駅に向かっている時、後ろから近づいてくる足音が聞こえたので振り返るとその男は手に拳銃を持って俺に狙いをつけていた。咄嗟に避けようとした時、男に誰かがぶつかった。その時だった。


 パーン。


 瞬間撃たれたと思った。だが俺の体は何処も痛くない。だけど…、隣にいて手を繋いでいた真理愛が倒れた。左肩から真っ赤な血がにじみ出ている。


その時だった。

「坂口さん、直ぐに救急車」


「はい」

俺は直ぐにスマホで緊急番号を押した。


「悠、私」

「しゃべるな」


 俺は持っているハンカチで直ぐに真理愛の左肩を押さえた。全然血が止まらない。どうすればいい。どうすればいいんだ。

「真理愛、目を瞑るな」

「は・る・か」

「真理愛、目を開けるんだ」


 その時救急車の音が聞こえた。





 真理愛を撃った男は分からない。薄暗くて良く分からなかった。捕まえたのは公安警察だろう。


 三回も狙われるなんて。そして今度は真理愛が犠牲になってしまった。俺の前には、目を閉じている真理愛がいる。

 医者の話では、幸い急所は外れたが左肩の骨が粉々になった様だ。左腕はもう使えないという。

 

 涙が止まらない。俺の所為で。俺があんなことしなければ、真理愛がこんな事にはならなかった。



 いきなりドアが開けられた。ここは集中治療室。他人は入って来れない。泣き顔のまま振り向くと

「真理愛!」


 その女の人は、真理愛の姿を見て驚いた顔をしている。

「真理愛、大丈夫なの、大丈夫なの?」

「真理愛は今寝ているだけです」

「あなたは?」

「坂口悠です。真理愛の友人です」


 俺の顔をキッと睨むと

「あんたの所為よ。あんたなんかと付き合わなければ、娘はこんな事にはならなかった。出て行って!」

「…………」

 俺の役目は終わった様だ。そして真理愛との関係も。



 集中治療室を出て、廊下を歩く。自分の精神がまともで無い事が分かる。マンションに帰って休もう。



 俺が病院を出ようとすると目の前に一台の車が停まった。

「乗りなさい」


 住吉さんだ。俺は無言で助手席に乗ると

「工藤真理愛を撃ったのは、父親だ」

「何ですって!」

「君を殺す目的だったが、公安特務員が撃つ瞬間に防いだ。だが弾道が君から外れ工藤真理愛の左肩に当たった。少しずれていれば心臓直撃だったから運が良かったんだろう」

「…………」


「もうこれで君を狙う者はいない。警察には君への聴取はしない様に指示してある。無駄な時間を使わせたくないんでな。私が君に伝えるのはそれだけだ。マンションまで送る。少し休むといい」



 俺は住吉さんの車でマンションの入口まで送られた。道路では、まだ警察が現場検証をしている。車を降りる時

「坂口君、まだ君の警備は続ける」


 それだけ言うと住吉さんは去って行った。俺は自分の部屋に入るとそのまま寝室に行ってベッドに横になった。まだ真理愛の残り香が一杯残っている。自然と涙が出て来た。


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

次回以降をお楽しみに。

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