第35話 仙田温泉雪山ビレッジの出来事


話中に聞いた事のあるワードが出て来ますが、現実の組織、団体とは一切関係ありません。また一部分詳細に書かないが故に説明不足を感じる方もいると思いますが、ご了承願います。

この話はほとんど坂口悠視点です。

宜しくお願いします。


―――――


 仙田温泉。ここは日本でも有数の温泉街がある。冬はスキー客と温泉客で街が埋まる位人気がある。俺は、スキー客を装い来ていた。機材はスキー客が持つ大きなバッグの中に入れてある。こうすればスキー客と思われるだろう。



 タクシーで雪山ビレッジまで行った。送迎バスがあるが、万が一あいつらと鉢合わせする可能性もある。橋本さん達ともだ。両方のグループに俺の存在をばらす訳には行かない。


 雪山ビレッジに着くとフロントで鍵を受け取った。午後三時チェックインだが、ほとんどの客はその前に来てスキー場に行っているはずだから、部屋のある階には誰もいないはずだ。



 俺の部屋は四〇六号室、橋本さん達は四〇五号室、俺の部屋の前だ。

 そしてあいつらは、ビレッジの壁沿いになる四〇七号室と四〇八号室が予約されている。

 四〇八号室は俺の隣部屋、四〇七号室は橋本さん達の隣部屋。しかしあいつらどうやって橋本さん達の部屋番を知ったんだろう。



 部屋に入ると窓の外に雪景色が広がっている。三十分程ゆっくりした後、俺は機材をバッグから出した。


 持って来たのは単一志向性高感度集音マイク、それとハンディカメラだ。これの出力をノートPCに接続すれば出来上がる。音声をテキスト出力させれば音は漏れない。マイクの方向は四〇五、四〇七、四〇八だ。


 あいつらは午後四時半位には上がってくるはず。だから俺はそれまでに四〇五号室、四〇七号室と四〇八号室の合鍵を作る事にした。幸いカードロックだ。物理的な鍵なら無理かもしれないがこれなら個別に作れる。カードロックの並びは決まっているからだ。



 来る時、コンビニで買ったパンを食べながら待っていると廊下から話し声が聞こえる。橋本さん達だ。男の声も聞こえる。あいつらだ。そうか、橋本さんの姉とあいつらは同じ大学の学生という事か。それで部屋が隣同士なんだ。これで疑問が解けた。



 それから三時間、風呂と食事を済ませた後、何かみんなで遊んでいたんだろう。もう午後九時だ。それぞれの部屋に分かれて入った様だ。

 それから一時間ほどして橋本さん達の部屋からは、音が聞こえなくなった。今日は何も無いのか?


 少しすると


 -ガチャ。

 -行くぞ。あれは持ったな。

 -もちろんだ。


 -ガチャ。

 何、合鍵を持っているのか。どうやって手に入れたんだ?


 四〇五の部屋の音を聞いていると


-きゃっ、ムグムグ。

-きゃーっ、ムグムグ。

-だ、だれ、ムグムグ。


 -ズルズル。ズルズル。ズルズル。

 何かを引き摺っている音だ。


 -ガチャ

 -ガチャ


 四〇七号室と四〇八号室のドアが開く音がした。両方の部屋に引き摺る音が入って行く。どうする。出るか。まだ誰か廊下にいるかもしれない。十分程待った。静かだ。


四〇七号室と四〇八号室の部屋からは、

四〇七「睡眠薬で寝かしてある。起きていないのが残念だがな。お前は姉の方が先だ。俺は妹を」

四〇八「ふふ、友達も良いスタイルだな。起きていないのが残念だが」


 なんて奴らだ。睡眠薬をかがせて部屋に引き摺って行ったのか。もう良いだろう。収音マイクはそのままに俺はハンディカメラとダクトテープを持って部屋を出ると橋本姉妹が連れ込まれた四〇七号室に入る事にした。


 ガチャ。


 明りは付いている様だ。中に入るとツインベッドのそれぞれに橋本姉妹が乗せられ、素っ裸にされていた。そして男達が…。カメラを台の上に置くと


 俺は言葉も掛けずに手前のベッドで姉の方に悪戯している男の両足を思い切り引くと男の股に蹴りを入れた。


 ぐぁっ。


 一撃で気絶したみたいだ。隣に寝かされている加奈ちゃんの体に悪戯していた男が俺の顔を見て

「お、お前は、あの時の」


 何も言わずに顔に蹴りを入れてやった。


 ぐはっ。


 簡単に気絶した。しかしこいつら素っ裸だな。俺は急いで手足を後ろ側にしてダクトテープで巻くと目と口を塞いだ。体は素っ裸のままだ。幸い、二人は寝ている。


 次にハンディカメラとダクトテープを持って四〇八号室のドアを開けると残念だが男のあれが女性の中に入っていた。


 カメラを台において男がこちらを振り向いた時、思い切り顔に回し蹴りを入れてやった。拍子にベッドの下に転げ開落ちた後、もう一度顔に蹴りを入れて気絶させた。


 同じように手足を後ろ側にしてダクトテープで巻き、目と口もダクトテープを巻くとまだ寝ている彼女の上にタオルを掛けて部屋を出た。


 四〇七に戻ると姉と妹にそれぞれタオルを掛けてから、妹の方の体を揺らしたが起きそうにない。

 仕方なく少し待っていると十分程して

「う、ううん」


 妹の加奈が起きたようだ。大声を出されては困るでの彼女の口に手を置くとしっかりと目を覚ました。

「うぐっ、うぐうぐ」

「橋本さん、静かにして。冷静に周りを見て」


 彼女がベッドの下で素っ裸で転がっている男達を見ると目を丸くしてから口を塞いでいる俺の手を取ると

「坂口君、どういう事?」

「説明は後だ。バスローブでも何でもいいから着てくれ」

 彼女はタオルが開けた素っ裸の自分の姿に


「わ、わわわっ」

顔を真っ赤にしてタオルを体に巻き付けた。


「な、なんで、坂口君がここに?」

「今は、説明は出来ない。君とお姉さんは寝ている時に睡眠薬をかがされて、この部屋に連れて来られ、悪戯をされた。多分少しだけ。

 お願いが有る。お姉さんを起こすのと、四〇八号室に友達が悪戯されている。相手した男はこいつらを同じ目に合わせてある。

 こいつらも直ぐに起きるだろうけど、これでは動けない。君が警察に電話してくれ。俺は直ぐにこの部屋を去る。

 君は警察にこう言うんだ。目が覚めたらこんな事になっていた。私は睡眠薬をかがされて何も分からない。

 絶対に俺の事は黙っていてくれ」


「でも、それじゃあ。坂口君が」

「いや、俺は明日にでも帰る。普通の客としてね。後は頼むよ」

「あの、警察に電話するまでここにいて。怖い」

「分かった」


 彼女は警察に電話して事の次第を話した。直ぐに警察が来るという事だ。


「じゃあね。加奈ちゃん」


 俺は彼女の返事も聞かずに自分の部屋に戻り、ハンディカメラの映像を確認した後、マイク機材をバッグの中に仕舞って、直ぐにジャージに着替えてベッドに入った。


 十分もしない内に何人もの足音が聞こえた。俺をそれを聞いた後、眠りにつこうとしたが、直ぐにドアがノックされた。

 いかにも寝ていた顔で、ドアを開けると


「就寝中申し訳ありません。警察の者ですが、少し時間宜しいでしょうか」

「はい、ふわぁふわぁ。あっすみません寝ていたもので」

「そうですか。何か物音を聞いたりしませんでしたか?」

「この通り寝ていたので」

 髪の毛を手でくちゃくちゃしながら誤魔化した。警察がドアを閉めるとロックを掛けて今度はしっかりと眠った。少し廊下が五月蠅いけど。



 朝午前六時習慣で一度起きてしまう。廊下の方は静かだ。何も知らない顔をして食堂に行きモーニングを食べると、周りから昨日の事が話されている。

 よし、これでいい。騒がれる程効果が出る。


 俺は、午前十時にチェックアウトすると帰路についた。


 あいつらは俺の顔を覚えている。今回は前の様に金払って無しなんて事にはならない。相手は警察、暴力団神門組それに法務省だ。

 

 あいつらに捕まえられる前に、今回の件を各メディアに送り、ネットにアップして騒いでやる。流石に工藤親子、木崎親子、遠藤親子もただではすまないだろう。

 実家にも調べは行くだろうが何も知らない以上、見張り程度で済むだろう。


 マンションからも一時避難した方が良さそうだな。こうなったら、警視庁のサイバーセキュリティシステムのパラメタを全開にするか。そうすれば警視庁だけでなく警察庁も忙しくなる。


 真理愛が心配だが、今は何にも出来ない。


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

次回以降をお楽しみに。


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