第11話 三学期はあっという間です


 私、高橋友恵。坂口君と元旦に会ってから、今までになかった思いが心の中に湧いて来た。それが何であるかは分かる。中学の時、一度経験いや片思いをしたから。その人は別の高校に行ってしまったけど。



 二日目以降、会いたくて仕方なかったけど、元旦に彼と別れた時のあの後姿が手を伸ばしても届かない何かの様に見えて、連絡を取れないでいた。


 本当は会いたい。会って話をしたい彼の声が聴きたい。でも出来ない。自分の心の中で何かが連絡を取らせる事を引き留めていた。



 学校が始まったのは十日から。成人式が日曜の後に来たので開始が遅くなった。冬休みの宿題は去年、坂口君と毎日会っていた時の午前中に終わらせている。


 私はいつもの様に登校して教室に入った。皆賑やかだ。クラスの仲の良い友達が私に挨拶をしてくる。

 私も上手く挨拶を返していたけど、心の中は彼の事で一杯だった。



 始業式で体育館に集合した時、1Aの列に彼がいるのが直ぐに分かった。声を掛けたいけど出来る所ではない。

 今日の授業はLHRと二教科だけ。その後声を掛けよう。




 授業はあまり身に入らなかった。冬休みの宿題の答え合わせだからどうでもいい。授業が終わると帰り支度をして直ぐに1Aの入口に行ってみた。まだいた。


 彼が出て来るのを待っていると彼がこちらに歩きながら友坂絵里さんから声を掛けられている。何を話しているのか聞こえない。


 何となくここでは不味いと思い、下駄箱に移動した。ローファーに履き替えて彼が来るのを待った。


 あっ、彼が来た。でも友坂さんと一緒だ。彼女が坂口君に何か言っている。でも彼は軽く受け流している様だ。


 下駄箱に来ると私の方をチラッと見た後、履き替えて校舎を出て行った。なぜか友坂さんは一緒じゃない。


 チャンスと思って彼を追いかけた。まだ校門まで行っていない。


「坂口君」


 彼がこちらを振り向いた。


「高橋さん」

「ねえ、一緒に帰ってもいい?」

「別に良いけど」

 嬉しいけど、複雑だ。この子は俺と友達になるよりもっと他の良い人と付き合えばいいのに。


「ねえ、坂口君、今日今から君のマンションに行っていい?」

「何か用?」

「用はある。君の傍に居たい」

「えっ?!」

「だから行きたい」

「…………」

 どういうつもりなんだろう。



 彼と駅まで一緒に行った。彼は私が彼の部屋に行く事を拒否していない。だから行って良いんだ。


 駅まで何も話さなかった。改札を通ると彼が行くホームに私も一緒に歩いた。それでも彼は何も言わなかった。




彼のマンションの最寄り駅で一緒に降りて歩いた。彼は何も言わない。



 マンションの前に来ると

「高橋さん、どういうつもりで来たのか知らないけど、帰った方が良いんじゃないか」

 俺は大分ストレスが溜まっていた。四日から開いている武道場にもいかなかった。行く気にならなかった。


「いいの、部屋に入らせて」


 彼は、無言でそのまま部屋まで行って鍵でドアを開けると先に入った。私も続いては入ったけど断る事はされなかった。


 玄関を上がりリビングに行って彼がスクールバッグを肩から降ろすと私も降ろしてから…抱き着いた。


「会いたかった。本当に会いたかった。元旦の日に坂口君と別れてから、何度も連絡しようとしたけど、君のあの時の後姿がさせてくれなかった。

 お願い坂口君。何でもいい。私はあなたの役に立ちたい」



 この人は何を言っているんだ。この人に何かできる事が有るのか。彼女が俺の体に抱き着いて来ているけど、俺はこの人の事友達にしか考えていないし。


 まして抱き着くなんて出来ない。でも鳩尾辺りに当たっている柔らかい物が、変に俺を刺激している。初めての経験だ。


「坂口君、もし、君の心が私の体で少しでも和らげられるなら……いいよ」

 何言っているんだこの人は。そんな事出来る訳が無い。


「坂口君」

 ぶら下げている俺の左手を彼女の右手が、俺の左手を掴んで…えっ、彼女の左胸に当てられた。手の甲を押されている。とても柔らかい。


「いいよ、君が少しでも心が安らぐなら」

「でも、俺達付き合っても無いし」

「そんな事どうでもいい!」


 唇を塞がれた。



……………。


「っ!痛い」

「ごめん」

「いいの。続けて」




 ベッドの上で高橋さんが一糸まとわぬ姿で横になっている。俺は理性が壊れた様に彼女の体を欲しがった。

 彼女もそれに応えてくれた。でも恋人でもないのに一時の感情でこんな事してしまった。どうしよう。


「坂口君、後悔した様な顔しないで。私がせっかく初めてをあげたのに。そんな顔されると寂しい」

「ごめん、でも俺達友達だったし、こういうのって付き合っている人達がするもんだろ?」

「じゃあ、付き合う?」


 俺なんかで本当に良いのか。俺はこの人に恋愛感情は持って…本当に持っていないのか?単に自分のストレスのはけ口にしてしまったんじゃないのか。でも責任取らないといけないよな。


「分かった。付き合う」

「ふふっ、何その言い方。命令されて無理矢理言った感満載だよ」

「ソンナコトナイケド」

「なんで棒読みなのよ」

「…………」



「ねえ、私の事名前で呼んで。友恵って」

「いいけど」

「じゃあ、呼んでみて」

「友恵」

「ふふっ、良く出来ました悠」


「学校では聞かれたら付き合っているとは言うけど無理矢理お披露目するのは止そう」

「それが良いね。一緒に登校は出来ないけど下校はいつも一緒で良いよね」

「ああ、それでいい」



 それから俺達は、毎日学食で一緒に昼食を摂り、毎日一緒に下校した。彼女はあっちに積極的で毎日の様に部屋に来る。


 避妊はきちんとしているから良いけど、流石に毎日は俺もきつい。だから週一位にしようと言ったら週三と言って来た。


 そして毎週そうした。彼女といると余計な事を考えなくて済む。だから俺もちょっとのめり込んだ。


 バレンタインデーになった。俺はいつもの様に教室に入って行くと皆賑やかだ。あっちこっちで綺麗にラッピングされたチョコが渡されていた。


 俺は今日下校の時に友恵から貰う様に決まっている。だから何も期待せずに自分の席につくと絵里がやって来た。

「悠、これバレンタインチョコだよ。本命だからね」

「いや、俺は…」

「いいから受け取りなさい。やがてあなたも意味が分かるわ」

「…………」

 どういう意味が分かるんだ?



 私、友坂絵里。悠は今高橋友恵と付き合っている。普段のあの二人の行動を見れば疑う余地もない。彼女がどうやって悠の心の中に入り込んだのか聞いてみたい位だけど、あの二人は長くは続かない。彼の傍に最後にいるのは私。悔しいけど待つしかない。




 俺達は春休みを迎え、毎日していた。一応ぎりぎりの理性が有ったけどあれの購入がネットで頼まないと行けなくなってしまった。彼女凄く強い。


 

 そして俺達はとても仲が良いまま、二年生になった。


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

次回以降をお楽しみに。


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