コウノトリ星人

クロノヒョウ

第1話



 コンビニで雑誌を買い自動ドアを出ると目の前に小さな男の子が立っていた。


 男の子は真っ黒な大きな目でただじっと私のことを見上げていた。


 そしてそっと細い指を私に差し出した。


「はっ」


 指に触れたと思った瞬間、私は知らない場所に寝かされていた。


 暗くて無機質な部屋。


「ダイジョウブ」


 機械の音声のような声。


 すぐ横にさっき見た男の子が。


「ダイジョウブ」


 そう言いながら私の体を調べるかのようにあちこち触っていた。


 不思議と怖いという感覚はなかった。


 むしろ静かで落ち着いていてなんだか優しい気持ちになっていた。


 だんだんと眠くなるくらい心地よかった。


「アリガトウ」


 そう言われて目を開けると私はさっきのコンビニの前にただ立っていた。


 ハッとして辺りを見てもあの男の子の姿はどこにもなかった。


 私はそのまま家に帰った。


「ただいま」


「お帰り」


 部屋に入ると彼が起きて待っていてくれた。


「どうだった? 深夜の散歩は」


 彼は心配そうにしながら私をソファーに座らせてくれた。


「あの噂は本当だった」


「マジか!? じゃあ……」


 私はゆっくりと頷いた。


「すごいな! よかったな! これで俺たちも親になるんだな」


「うん」


 私は手に持っていたままだったコンビニの袋から雑誌を取り出した。


「この『正しい宇宙人の育て方』を深夜に買うとコウノトリ星人が来て子どもを授けてくれるって本当だった」


「どうだった? コウノトリ星人」


「可愛かった」


「そっか。楽しみだな」


「うん」


 少子化問題の対策で最近ではコウノトリ星人に子どもを授けてもらう人が増えているという。


 噂が本当かどうか確かめるために彼と話し合い私は深夜に散歩してみることにしたのだった。


「早速この本を読んで勉強しなくちゃな」


「うん」


 彼は嬉しそうに私の少し膨らんできたお腹をさすりながらそう言った。


 そんな彼の目が真っ黒で大きく見えたのは私の気のせいだろうか。


 私はふと鏡を手に取った。





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コウノトリ星人 クロノヒョウ @kurono-hyo

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