【KAC20233】ぼくとおばあちゃんのぐちゃぐちゃのごはん

無雲律人

ぐちゃぐちゃのごはん

 ぼくはまだ小さいこどもだから、ごはんをぐちゃぐちゃにして食べる。


 ミートソース、オムライス、めだまやき、なっとう、おさかなのフレーク、ぜんぶぐちゃぐちゃだ。


 ぼくはこのぐちゃぐちゃしたごはんが大好きだ。お口のなかで色んなあじがまざって、とってもおいしいんだ。


 きょうは大好きなおばあちゃんといっしょにごはんを食べる。


 おばあちゃんは、ぼくとおそろいのよだれかけをしている。


 おばあちゃんのまえにも、ぼくと同じハンバーグとゆで野菜がある。


 ぼくはにんじんとブロッコリーとハンバーグをぐちゃぐちゃにした。


 お口にあーんとひとくち入れる。


「おいしい、おいしいね、ママ!」

「あら、良かったわ。たー君の好きな味だったのね。いっぱい食べてね。ママ嬉しいわ」


 ぼくはお口いっぱいにお米もほうばる。


「おいしい、おいしいよママ!」


 まえに座っているおばあちゃんをチラッと見た。


 おばあちゃんのごはんは、細かく切ってあって、それをぐちゃぐちゃにして食べている。


 ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃ。


 ぼくのごはんよりぐちゃぐちゃだ。


「ママぁ、なんでおばあちゃんは大人なのにごはんをぐちゃぐちゃにするの?」


 すると、ママはやさしくほほえんでこう言った。


「おばあちゃんはね、心は小さい子供なのよ。人はね、いっぱいいっぱい年を取ると、子供に還っていくの。おばあちゃんはね、歯も小さい子供と同じようになったから、ご飯を細かく切ってあげるの。そして、それをぐちゃぐちゃにして食べるのが好きなの。だからね、大人でもたー君と同じ子供と同じようなものなのよ」


 へー。にんげんって、大きくなりすぎるとこどもになるんだ。


 じゃぁ、ぼくもママやパパみたいな大人になったあと、またこどもになるのかな。


 そうしたら、またいっぱいあそべるね。


 こんど、おばあちゃんに、いっしょにお人形であそぼうって言ってみようかな。


 うれしいな、ぼく。



 ────了

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