第3話 モブは妖精

僕らは、ケイタの家に戻った。どれくらいの時間が経ったんだろう。机の上のPCはついたままだ。サクラの花びらが落ちている。

「ケイタ。」ママの声「みんなリビングに来なさい。」僕らはリビングに行った。「ダル、久しぶりですね。教官らしくなりましたね。」

「はい。ご無沙汰しています。バイオレット姫。」「今回は、生徒が妖精界のカギをなくしてしまいケイタ君を頼ってしまいました。姫のお子様にご迷惑をかけて申し訳ございません。」「問題ありません。妖精界のお手伝いができるのはうれしいです。あなたがピンクですね。」僕は思わず「はい。」と答えてしまった。

ピンクが「ケイタ、なんで君が答えるの。ピンクは、私よ。」「ごめん。ごめん。つい。」僕は自然に口から言葉が出ていた。ピンクのお兄さんになったきになっていた。ダルが「ピンク、言葉遣い注意しなさい。ケイタ君に失礼だぞ。」小さい声で「はーい。」反省した口調でピンクが答えた。「べつに僕はいいよ。」ダルが「姫、どうして、我々が来るのが分かったのですか?」「虫たちが教えてくれたの。」妖精二人とヘンテコ鳥が一羽、上空を飛んで何かを探しているってね。」「ヘンテコな鳥は僕ですか?」姫は、少し笑いを含ませ、「そう。ですね。」とダルに答えた。モブの僕は急激なこの展開についていけなかった。思わず、「ママ、状況を説明してほしい。ママが姫で。僕は妖精の子供?よく理解できなくて。正直頭の中が混乱している。」「そうね。ケイタには何も伝えていなかったわね。ごめんなさい。別に隠していたわけじゃないのよ。タイミングを逃していただけ。それに妖精も人間も生活はさほど変わらないし、特段支障もないから。でもケイタ覚えていないの?小さいときはよく妖精界に連れて行ったのよ。」僕はおぼろげに覚えていた。”ふあふあ”したあの感じ。今更だがあれが妖精界だったのかと改めて思った。「そうだね。なんとなく覚えているよ。」ピンクが「もしかしたら私達、小さいころあっているかもね。でも、100進法の妖精の私の方が年上だけどね。まあ、見た目はケイタがお兄さんだけどね。」「そうだな。僕の方がお兄さんだよな。」二人して顔を見合わせ笑った。「でも、正直ほっとしてるのよ。、ダル。ケイタは人間界ではあまりなじめず、おとなしい子供に育ってしまったから、親しい友達もいないようだし。でもピンクとこんなに楽しくしているの見ると、ほっとしたわ。」ダルが「そうですね。二人ともとても仲が良くてよかったです。ピンクは少し、おてんばのようですが。そう。姫、話はもっとしていたいのですが、今は時間がありません。姫の力でカギを見つけてください。」「そうですね。つい、おしゃべりに夢中になってしまいました。ごめんなさい。」そう言ってママは、リビングの大きな鏡の前に立ち呪文を唱えた。”サラドゥ・サラドゥ」すると鏡にサクラのカギが映し出されて、デビル界の蜘蛛の妖精が持っていました。そしてカギは蜘蛛の魔法のネットの中にありました。ダルが「姫、場所はどこですか?」「運動公園の大きなクヌギの木の中です。地面から3m

ぐらいのところにデビル界への時空空間のドアがあり。その中にカギはあります。」「姫、ありがとうございました。これからと取り返しに行きます。」「気をつけてください。蜘蛛の妖精は口から毒を出します。くれぐれも注意してください。ケイタ、あなたの妖精の力を持っています。存分に働きなさい。ピンクを助けてあげるのですよ。」「わかりました。」「ダル、二人をお願いしました。」「はい。任せてください。」三人は魔法で空を飛び運動公園の大きなクヌギの木に着きました。ピンクが「少し、緊張するわ。」とケイタの袖をつかんだ。僕は「大丈夫。僕がいるよ。」とピンクの頭に手をのせて言った。ピンクは安心したようで。後ろからダルの声「ピンク。君のおじの教官のダルもいることを忘れていないか。」ピンクが少し笑って「そうだった。ダル。じゃ、みんな行くわよ。」そう言って僕らは蜘蛛の妖精界にサクラのカギをとり戻しに時空空間を移動した。「ドン。」三人同時に蜘蛛の妖精界の

着陸。そこは暗く、そこらじゅうに銀色に怪しく光る蜘蛛の糸が張り巡らせてあった。蜘蛛の妖精界の街並みは茶色いレンガで積んだ家々がたくさんあって町全体が迷路になっていた。遠くに高くそびえたつお城が見えた。ダルが「あれが蜘蛛の妖精界の王様が住んでいるお城だ。みんな気をつけておくれ。あくまでも旅行者を装うんだ。」ピンクが「別の妖精界どうしで、旅行するって聞いたことないんだけど。」ダルが「そうだな、今はほとんどしない。それぞれが独立していて、お互い干渉しないことになっているからな。でも僕が若いころは、デビル界側の妖精界でも行き来をしていた。それにほら、ここは僕の友達の家さ。」そう言ってダルは一軒の家に入って行った。「やあ、ベモン、元気だったか?」「久しぶりダル。元気そうだな。」ダルがべモンに僕らを紹介した。「僕の生徒で姪のピンクだ。こっちはケイタ。よろしく。」「ピンクです。よろしく。」「これまた、可愛い妖精さんだ。」「ケイタです。よろしく。」「よろしく。」「僕は蜘蛛の妖精ベモンだ。ダルの古い友人だ。」「ところでダル、どうしたんだ。めずらしいね。君が訪ねてくるとは。」「そうなんだ。大事な用があって。ダルは、魔法を使ってバイオレット姫が見せてくれた鏡の魔法”サラドゥ・サラドゥ”を使った。「ベモン、このカギを僕らは取り返しに来たんだ。知らないか?この場所。」「あー、最悪だ。ダル、この場所はお城だ。そしてこのサクラのカギを持っているのは我々の国王、ビージョン国王だ。彼はかなりひどい性格だ。この間は蝶の妖精界を侵略めちゃくちゃした。で今回はサクラの妖精界を狙っているようだ。ダル、相手が悪い。」そこへ大きな風が吹き、窓に黒い大きな影。「誰が悪いって?」よく見ると噂をしていた国王。最悪のビージョン国王がいた。「僕らは逃げようとして入り口に駆け出した。ビージョン国王は口から「ピュ―」と口から糸をはき僕らを捕まえた。「離して。」ピンクが大声で叫び振り返る。

最悪のビージョン国王と目があい。ビージョン国王の動きが止まり、「これは可愛い妖精さんだ。大変失礼をしました。ご無礼を許してください。お名前は?」「ピンクよ。」どうやら最悪のビージョン国王はピンクを好きになったようだ。ダルがすかさず「ビージョン国王、こちらこそ挨拶が遅れて申し訳ありません。今回ピンクの小学校の卒業式が迫っています。カギを無くしたようで帰れません。そのカギがこの国にあると聞いて探しに来たのです。それに卒業式に出れないとサクラの妖精界でピンクは落ちこぼれになります。それではピンクがあまりにかわいそうなので我々、家臣が付きそうで妖精界へ戻るためにカギを探しに来た次第です。「ピンクの卒業式?それはぜひ出席しなければいけません。将来の私の妃になるためにもぜひ卒業式は出席してください。」ピンクが「私が妃?誰の妃?」蜘蛛の妖精界のビージョン国王が真面目な顔で「僕の妃にです。」ダルがピンクにウインクした。”ここはふりをするんだピンク。”ピンクは「わかりました。ではカギを返してください。」ビージョン国王「わかりました。しかし、ピンク、君が戻ると約束が無い。悪いがこの魔法の蜘蛛のネックレスをつけてもらうよ。これで君がどこにいても僕は君の居場所を探せます。」ピンクが一瞬いやそうな顔を見せたが僕は「ビージョン国王、これは銀色に輝き素敵なネックレスですね。卒業式の衣装にもとても似合うことだと思います。」蜘蛛の糸の銀の輝きを褒められてビージョン国王は気分が良くなった。「では、卒業式が終わればピンクを連れてビージョン国王の元に戻ります。」「約束だ。」「はい。」僕らは蜘蛛の妖精界を後にした。ピンクの手には、サクラの妖精界のカギが。ピンクは不安そうな顔をしていたが僕はピンクの手を握り「大丈夫。僕がいる。」ピンクをまっすぐ見た。家に戻るとバイオレット姫、ママが待っていた。「少し、やっかいなことになったわね。でもピンク大丈夫よ。」「それにダル、ダルも教官なんだからしっかりしなさい。」「ケイタ、ケイタは、卒業式に出席しなさい。一緒にサクラの妖精界に行きなさい。守るのよ。」僕は「いわれなくてもそうするつもりだったよ。」そう言ってピンクの手を握った。

僕らはサクラの妖精界へ出発した。






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